2018 Fiscal Year Annual Research Report
超多成分混合ガスリアルタイム計測によるバイオマスガス化の限界までの高効率化
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17H03454
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
則永 行庸 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (00312679)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 反応機構 / バイオマス / ガス化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、熱分解やガス化で発生する多成分混合ガスのリアルタイム計測法の確立を目的とし、研究量子化学計算からプロセス解析に至るマルチレベルの情報を結合し、熱分解におけるバイオマスの挙動を分子レベルで予測できる詳細化学反応速度モデルを構築し、さらに実験値とシミュレーションとの比較によってタール成分の分解反応も含めたモデルの妥当性の検証を試みている。本年度得られた研究実績は、次のように要約される。 多種の軽質ガスと芳香族化合物の混合物である揮発成分をリアルタイムで検出、定量するためにLi+イオンを使うイオン付着質量分析(Ion attachment mass spectrometry;IAMS)を適用した結果、水素、水蒸気、メタン、一酸化炭素、二酸化炭素等の主要軽質ガスに加えて、タールの主成分である単環および二環芳香族化合物をフラグメントフリーで検出、計測することに成功した。個々の化合物に由来するスペクトル強度は、別途実施したガスクロマトグラフィによるオフライン分析結果と一致した。さらに、試料粒子供給速度に比例することも確認し、これによってIAMSによる多成分混合蒸気のリアルタイム定量分析が可能であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高効率なバイオマスガス化を実現する上で、タールの分解反応機構を解明することが重要である。しかし、タールを構成する多環芳香族の気相反応機構を分子レベルで理解し、反応器設計に必要となる反応速度モデルを構築した例や、タールの主成分である芳香族化合物を含む多成分混合ガスのリアルタイム計測法は確立されていない。本研究では、初期熱分解タールの分解を含むバイオマスガス化反応機構の解明のために、熱分解、ガス化反応で発生する多成分混合ガスのリアルタイム計測手法の確立に向けた研究を実施した。得られた進捗として、Li+付着イオン化質量分析法を固体燃料熱分解揮発成分のリアルタイム定量分析に初めて適用し、多成分混合物である揮発成分のフラグメントフリー計測に成功したことを挙げることができる。ここで提案された計測手法は、バイオマス熱化学転換の基盤技術として有用であると考えられる。今後、測定結果の精度の検証や異なるバイオマス種での検討を進めていく準備が整えることができ、研究目的に照らし、おおむね順調に進捗していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
バイオマスガス化の限界までの高効率化に向けた、バイオマスタールの分解反応機構の解明に向けた、リアルタイム計測手法を提案できた。高効率なガス化プロセスを開発するためには、ガス化反応器の設計に有用な反応速度モデルを構築する必要がある。このため、た成分混合系のバイオマスガスの同時計測手法の開発に加えて、バイオマス熱分解シミュレーションにおける経験的要素の最小化を目的とし、初期熱分解揮発成分の分子組成を予測できる詳細化学反応モデルと既存の二次気相反応モデルを連成することで、一連の熱化学プロセスにより発生する生成物分布を予測可能な、速度モデルの構築も目指す。
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Research Products
(6 results)