2017 Fiscal Year Annual Research Report
アンモニアの常温常圧合成のための高効率プラズマ触媒反応法の開発
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17H03460
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
岩本 正和 早稲田大学, 理工学術院, 客員上級研究員(研究院客員教授) (10108342)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アンモニア合成 / プラズマ法 / 金属細線 / 触媒 / 気相流通系 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は下記の2項目について検討し、予定以上の成果を得ることができた。 1.プラズマによる窒素分子活性化法の最適化 ①プラズマが発生している条件下で紫外可視近赤外発光スペクトルを測定し、N2*(活性化窒素分子)やN2+(カチオン化窒素分子)等が生成していることを認めた。②これらの活性種の出現強度とプラズマ発生法(プラズマ周波数、電圧、電流、パルスシーケンス)の関連を検討し、10-50 kHzの減衰型正弦波を用いた場合にN2*の強度が最も強くなることを見いだした。③これらの検討に触媒検討を組み合わせた。今年度は銅細線電極上での触媒作用を調べた。銅細線を用いることによりNH3合成活性が大きく向上し、その活性はN2*発現強度と比例していることを認めた。 2.プラズマ法触媒が備えるべき機能の抽出とその機能を具備した触媒系の創出 ④まず触媒として種々の金属細線を用いた場合の結果を整理した。金属細線の活性序列はAu>Pt>Pd>Ag>Cu>Fe>Mo>Ni>W>Ti>Alであった。プラズマ法アンモニア合成では従来のハーバー・ボッシュ法とは異なる触媒が活性であることがわかった。なお、Ruは金属細線の入手が困難なため実験できなかった。⑤最高活性を与えたAuやPt、Cuでは実験回数とともに触媒活性が向上した。これは反応管内壁に電極金属が飛散付着し、新たな活性点となるためであることがわかった。最終的にNH3収率は3.5%に達した。⑥この反応系での触媒の活性発現機構はほとんど検討されていないので、対応する窒化物の物性、水素活性化能、誘電率、比表面積等を指標として金属種と触媒活性の関連を検討したが、良い相関を与えるものは見いだせなかった。⑦次に、DFT計算によって表面状態を検討した。その結果、金属表面での窒化物生成熱(=窒素原子の吸着熱)とNH3合成活性が良く相関していることを認めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度は上に記したように2項目について検討したが、いずれの項目においても当初計画以上の成果を達成することができた。 ①まず、活性化窒素分子の選択的生成では、活性種がN2*であることを確定できたばかりでなく、減衰正弦波適用や周波数制御によってN2*が生成活性種の90%以上になる励起系を実現できた。活性種の選択的生成では、適切な活性種の生成を促進するため、ペニング効果ガスの添加等も計画していたが、このような処置が必要なくなったのでエネルギー効率の悪化を避けることができた。②AuやPt、Cu等が高いNH3合成活性を示し、常温常圧の流通系反応で収率3.5%という高い値を実現できたことも望外であった。常温常圧のプラズマ反応系では、特殊な膜状反応管触媒等を除けば、NH3収率はわずか0.23%程度であることを考えると、本実験の収率が文字通り桁違いに高いことがわかる。この点については来年度以降の実験でさらに伸ばせるように努めたい。③反応活性序列を制御している因子は、当初は全く不明であったが、DFT計算で金属表面での窒素原子の吸着エネルギーを計算したところ、このパラメーターと活性が非常に良く相関していることが明らかになった。表面吸着窒素原子のエネルギー値は実測が大変困難であるので、DFT計算が有効に機能した良い例ということができる。 本研究ではハーバーボッシュ法とプラズマ触媒法では触媒に求められる機能が大きく異なることを主張してきた。前者では、窒素分子への電子供与、三重結合の切断機能等が求められる。後者では窒素分子の活性化はプラズマ部が担当し、活性化された窒素分子の効率的な反応場を提供することが触媒の第一義となる。今年度の結果はこの考え方が正鵠を射ていたこと、すなわち「これまでのアンモニア合成触媒とは全く異なる触媒設計概念の導入、それに基づく最適触媒の探索」が必要であることを示している。
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Strategy for Future Research Activity |
順調に展開できているので、当初の方針通りに研究を進める。ただし、研究開始時には1-2パーセントのアンモニア収率(従来報告値の約10倍の収率)を達成できれば成功と考えていたが、既に収率3%程度を実現できたので収率の目標値を5%以上に引き上げる。
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Research Products
(10 results)