2018 Fiscal Year Annual Research Report
Development of a next generation transgenic chicken platform for biopharmaceutical production
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17H03470
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
上平 正道 九州大学, 工学研究院, 教授 (40202022)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | バイオテクノロジー / トランスジェニックニワトリ / バイオ医薬品生産 / ゲノム操作技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
低コストでバイオ医薬品を生産するために、トランスジェニック鳥類を生体バイオリアクターとして利用するための新しい技術を開発することを目的として研究をすすめている。申請者はこれまで独自に、鳥類胚培養法、ウイルスベクターを用いた高効率遺伝子導入、卵管特異的な遺伝子発現システムの開発を行い、抗体などの組換えタンパク質を卵や体組織に生産するニワトリ・ウズラの作出に成功した。本研究では、近年進展が著しいゲノム編集技術と申請者が開発してきたセル・エンジニアリング技術を融合し、胚操作による細胞ゲノムへの部位特異的な遺伝子導入技術を開発し、トランスジェニックニワトリによるバイオ医薬品生産のためのユニバーサルプラットフォームの作製を試みるとした。当年度は、(1) CRISPR/Cas9ベクターによるオボアルブミン遺伝子座への遺伝子ノックインの細胞での評価、(2) 始原生殖細胞(PGC)の培養条件の検討、(3) エレクトロポレーションによるニワトリ初期胚への遺伝子導入条件の検討、に取り組んだ。 前年度までに、ニワトリ卵白タンパク質であるオボアルブミンとリゾチームのゲノム遺伝子領域におけるイントロンあるいは3’UTRに目的遺伝子をノックインしてこれらのタンパク質と同時に生産させるためのガイドRNA(gRNA)の設計を行い、簡易アッセイにより改変効率が高いgRNAを選択した。候補gRNAとしてオボアルブミン遺伝子座をターゲットとしたノックインベクターを作製し、ニワトリDF-1細胞株および胚性繊維芽細胞でノックイン効率を評価した。さらに、それまで困難であったニワトリ初期胚へのエレクトロポレーションによる高効率な遺伝子導入法を開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.CRISPR/Cas9ベクターによるオボアルブミン遺伝子座への遺伝子ノックインの細胞での評価 前年度までに、ニワトリ卵白タンパク質であるオボアルブミンとリゾチームのゲノム遺伝子領域を外来遺伝子ノックインのターゲティングのためのガイドRNA(gRNA)の設計を行い、簡易な遺伝子ノックイン法として報告されているCRIS-PITCh法を用いるためのノックインベクターを作製した。さらに、高効率であることが報告されているCRIS-HITI法についても検討することとした。ニワトリDF-1細胞株および胚性繊維芽細胞でノックイン効率を評価したところ、CRIS-HITI法の方が有効であることがわかった。 2.始原生殖細胞(PGC)の培養条件の検討 近年では、トランスジェニックニワトリ作製にPGCを用いる方法が有効であるとしていくつかの報告がなされてきている。そのため、CRIS-HITI法によるオボアルブミン遺伝子座への遺伝子ノックインをPGCに対して行う検討も開始した。まずは、胚細胞からPGCの分離・樹立を試み、培養条件の検討を行った。あわせて、他研究機関よりPGCを入手し、遺伝子ノックインを行うための準備を進めている。 3.エレクトロポレーションによるニワトリ初期胚への遺伝子導入条件の検討 本研究ではCRISPR/Cas9システムによるニワトリ初期胚細胞へのダイレクトな遺伝子ノックイン技術を開発することを目的としている。エレクトロポレーション法を用いて最適な遺伝子導入条件についてレポーター遺伝子を有するプラスミドを使って検討したところ、電極をかえて胚への電気パルスの印加法を工夫することによって、胚の発生率をあまり低下させることなく非常に多くの細胞へ遺伝子導入が可能となった。遺伝子導入胚を胚培養で発生させたところ、生殖巣での導入遺伝子発現も観察された。
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Strategy for Future Research Activity |
1.始原生殖細胞(PGC)への遺伝子導入条件の検討 CRIS-HITI法によるオボアルブミン遺伝子座への遺伝子ノックインをPGCに対して行う。まずは、エレクトロポレーションによる遺伝子導入条件のPGCに対して最適化する。遺伝子ノックイン効率の評価を行いたいと考えている。さらに、遺伝子改変PGCが樹立できれば、それを用いたキメラニワトリ作製を試みる。 2.エレクトロポレーションによるニワトリ初期胚への遺伝子導入条件の検討 エレクトロポレーションによる遺伝子導入条件をレポーター遺伝子を有するプラスミドを使って検討しているが、当初は初期胚での遺伝子導入操作は困難であり、コンスタントに胚細胞へ遺伝子導入することができなかった。初期胚細胞へ高効率に遺伝子導入するには印加時の電極の位置が非常に重要であることがわかった。前年度に、電極の形状を変えて胚への電気パルスの印加法を工夫することによって、胚の発生率をあまり低下させることなく非常に多くの細胞へ遺伝子導入が可能となった。本年度は、この新しい遺伝子導入法の有効性を評価するために、体組織や生殖巣での導入遺伝子の保持率およびレポーター遺伝子発現量を評価する。 3.遺伝子導入ニワトリの作製 細胞培養レベルでの評価により有効であることが確かめられたgRNAを用いたCRIS-HITIベクターにより、胚盤葉期のニワトリ胚への適用で最適化されたエレクトロポレーション条件によって遺伝子導入を行う。い遺伝子導入胚を胚培養によって人工孵化させる。遺伝子ノックイン効率を細胞レベルで評価する。輸卵管組織や卵白中での導入遺伝子発現についても観察する。
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