2017 Fiscal Year Annual Research Report
Enhancement of the safety, durability and reliability of marine fuel cells
Project/Area Number |
17H03497
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
北原 辰巳 九州大学, 工学研究院, 准教授 (50234266)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 船舶海洋工学 / 燃料電池 / 異常診断 / 安全性 / ガス拡散層 |
Outline of Annual Research Achievements |
水素を燃料とする燃料電池はエネルギー変換効率が高く,生成物が水のみであることからゼロエミッション化が可能であり,高効率・低公害性が強く求められている船舶への適用が期待されている.しかし舶用燃料電池は長時間の高負荷運転や急激な負荷変動に対応する出力特性が要求されるとともに,海水(塩粒子)混入による性能劣化を防止することが重要であり,運転状態の異常を早期に検出して,安全性と耐久性・信頼性を向上させることが不可欠である.そこで本研究では電気化学インピーダンス分光法を用いた燃料電池の運転状態診断法を確立し,燃料電池システム全体の故障を未然に防ぐ方策について検討した.燃料電池の運転状態を電解質膜抵抗,電荷移動抵抗,物質移動抵抗の3抵抗と2容量成分からなる等価回路で表し,非線形最小二乗法によるカーブフィッティングを行って各部抵抗値と容量値の変化を精度良く測定した.燃料電池船の運転中に想定される冷却系故障によるオーバーヒート,ガス供給系故障による反応ガス供給不足,加湿器故障による電解質膜のドライアップおよびフラッディングなどの異常を人為的に発生させて,ナイキスト線図における各部抵抗値と容量値の変化を解析した.またカソード供給ガスに塩粒子を混入してセル電圧の経時変化を測定するとともに,ナイキスト線図における各部抵抗値および容量値の変化を解析した.燃料電池内部に海塩粒子が混入して電解質膜および白金触媒の劣化により非可逆的な性能低下が発生する前に,純水加湿運転に切り替え発電性能の回復効果について検討した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
燃料電池船の運転中に想定される冷却系故障によるセル温度上昇,ガス供給系故障による反応ガス供給不足,加湿器故障による電解質膜のドライアップおよびフラッディングなどの異常を発生させ,交流インピーダンス法を用いてナイキスト線図における各部抵抗および容量値の変化を測定した.またカソード供給ガスに海水(塩粒子)を混入してセル電圧の経時変化を調べるとともに,ナイキスト線図における各部抵抗および容量値の変化を調べた.燃料電池内部へ塩粒子が混入し電解質膜および白金触媒の劣化により非可逆的な性能低下が発生する前に純水加湿方式に切り替えて回復運転を実施すると発電性能の低下が防止できることを明らかにした.
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Strategy for Future Research Activity |
燃料電池の発電性能を向上させるためには電解質膜を適正な湿潤状態に保ちドライアップを防ぐとともに,電極触媒層で生成した過剰な水分を速やかに排出してフラッディングによる酸素供給の阻害を防ぐことが重要である.そこで親水性と撥水性の細孔を複合させたマイクロポーラス層(MPL)付きガス拡散層を開発する.また交流インピーダンス法を用いて燃料電池の過電圧をリアルタイムで解析する手法を開発する.燃料電池の運転中における各部過電圧を等価回路に置き,各々の抵抗値と容量値を同定する方法として,計測が容易で精度に優れるFRA(Frequency Response Analyzer)法が一般に適用されている.しかしFRA法は各周波数の正弦波を一つずつ掃引していくため,計測終了までに数十分の時間を要し,時々刻々と変化する舶用燃料電池の運転状態をリアルタイムで計測する手法としては適していない.そこで本研究ではFFT(Fast Fourier Transform)を用いた交流インピーダンス法により各部過電圧を実時間で精度良く測定する手法を開発する.燃料電池船の運転中に想定される冷却系故障によるオーバーヒート,ガス供給系故障による反応ガス供給不足,加湿器故障による電解質膜のドライアップおよびフラッディング,電解質膜および白金触媒の劣化などの異常を人為的に発生させて,ナイキスト線図における各部抵抗値および容量値の変化を解析してデータベース化する.さらにカソード供給ガスに海水(塩粒子)を混入し,ナイキスト線図における各部抵抗値および容量値の変化を解析する.これらの結果に基づいて,燃料電池運転中の異常を早期に検知し故障の原因を特定して燃料電池システム全体の故障を未然に防ぐ手法を確立する.
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