2018 Fiscal Year Annual Research Report
Fluorescent nuclear track visualization and high performance of Ag-activated phosphate glass dosimeter irradiated with photons and heavy charged particles
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17H03519
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
黒堀 利夫 金沢大学, その他部局等, 名誉教授 (90153428)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 銀活性リン酸塩ガラス / 蛍光ガラス線量計 / ラジオフォトルミネッセンス / 多光子顕微鏡 / リアルタイム線量計 / 重粒子線 |
Outline of Annual Research Achievements |
第1の研究実績として,ラジオフォトルミネッセンス(RPL)現象に基づく銀活性リン酸塩ガラス,光ファイバー,X線源を組み合わせたリアルタイムガラス線量計システムを構築し,その動作特性を確認した。この研究の意義は,代表的なRPL材料である銀活性リン酸塩ガラスの従来からの実用的な応用である線量計測のみならず,新たな応用への可能性を実証したことである。今回開発したリアルタイムガラス線量計システムは,これまでに開発の報告例はなく,さらにその動作機能を実用化されている他の材料を用いたリアルタイム線量計と比較検討を行ない問題点を明らかにした。これらの結果をまとめて"OPEN ACCESS”論文としてJpn. J. Appl. Phys.に論文として報告した。 第2の実績として,ミクロンオーダーに集束したプロトンビーム(陽子線)を高速に掃引することで各種マイクロパターンを銀蛍光ガラス材料中に書き込み,その二次元,三次元(2D,3D)イメージをフェムト秒レーザーを励起源とした2光子励起顕微鏡を用いて可視化した。さらに,1.7 MeVと3.0 MeVのエネルギーを有するプロトンビームの照射により銀活性ガラス中の深さ方向の線量分布のイメージを観測することにより,Bragg Peak(ブラッグ ピーク)の飛程の実験値と計算値との比較を行った。さらに他の材料では見られない低線量部分のプラトー領域における顕著な分布拡がりを観測し,その原因について探究した結果を学会でも報告してきた。これらの結果の一部をまとめた論文は,Jpn. J. Appl. Phys.の2018年度の”Spotlights 2018”に選ばれた。 上記の2つの実績は,銀活性リン酸塩ガラスの新たな応用の可能性を示した重要な成果と考えている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で目的とする銀活性リン酸塩ガラス線量計の光子,重粒子線照射によって形成されるマイクロスケールイメージングの可視化や筆者独自の考えに基づくリアルタイム線量計の開発など,この材料を用いた新たな応用の可能性と高性能化を実証した。さらに,従来バイオ領域で主に使用されているフェムト秒レーザーを励起源とする多光子顕微鏡システムを放射線領域の研究課題に使用できることを実証した。この高い貢献度を裏付ける証拠として,発表した論文は2018年度の”Spotlights 2018”として取り上げられた注目論文であるなどから,研究は順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策の第1は,昨年度開発した銀活性蛍光ガラスを用いたリアルタイム線量計の短所として,放射線照射中および照射後に発生するこの材料に特有な”ビルドアップ”現象が挙げられる。この現象を除外することは難しく,リアルタイム性を保持しながら正確な線量ならびに線量率を得ることは困難であると判断した。そこで今後,このようなRPL現象が顕著に起こらないと考えられるフッ化リチウム(LiF)結晶を用いて研究開発を継続する。 第2は,実用的な面からの検討として,この材料を線量計として用いる際,放射線の種類を弁別するために3種類の金属フィルターと厚さが異なるプラスチックを用いている。特に,金属フィルターはガラス線量計の周囲を取り囲むような構造で取り付けてある。この金属フィルターの中でも,錫(Sn)フィルターの領域において金属微粉が複数回の繰り返し使用中にガラス表面に付着し,再利用のためのアニーリング(熱処理)毎にプレドーズ(PD)値の上昇に繋がることが初期の分析で判明した。そこで緊僅の課題として,その原因の究明と対処法を検討する。具体的には化学分析(ICP-MS分析,SIMS分析)ならびに光学的手法(卓上顕微鏡,PIXE法,蛍光寿命,吸収・蛍光測定)などの手法を活用してガラス表面の金属付着の有無,ガラス内部への拡散状況,ガラス処理雰囲気中の違い,アニール温度の違いなどによるPD値上昇の影響を調べる。 この解決によって更なる銀活性リン酸塩ガラス線量計の高性能化に繋がると考えている。
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