2017 Fiscal Year Annual Research Report
Study of Methane Hydrate Decomposition
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17H03535
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
竹家 啓 名古屋大学, 工学研究科, 講師 (70515874)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷 篤史 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (10335333)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | メタンハイドレート / テラヘルツ分光 / 過冷却水 / 光学特性 / 準安定状態 |
Outline of Annual Research Achievements |
水分子が作る籠状構造にガス分子を取り込むことによって形成するガスハイドレートは、その特性およびに材料および資源としての有用性から多くの方法で研究がなされている。ガスハイドレートの中でもメタンハイドレートは世界中の海底大陸棚や永久凍土下に分布しており、日本近海にもその埋蔵が確認されている。自国のエネルギー資源の少ない日本にとっては、戦略的に使用できる将来のエネルギー資源としての期待も大きい物質である。材料として用いるにはその特性は熟知しなければならないが、メタンハイドレートには分解メカニズムが未解明であるという課題が存在する。本研究はその課題において、テラヘルツ波技術を用いて解明を目指した。 <結果I>ガスハイドレートの一つであるプロパンハイドレートの光学特性を広い温度範囲にわたってモデリングを行った。テラヘルツ波分光を用いる事で材料の複素誘電率、光学特性を計測し、その光学特性のモデル化を行ったところ、氷の場合における数式モデルを利用できることがわかった。これによりガスハイドレートの光学特性を定量的に用いる事ができ、今後の解析に利用できる。 <結果II>メタンハイドレートの相変化をテラヘルツ波分光法を用いて観測した。温度を変えながら測定を行ったところ、ある特定の温度以上で試料の体積が減少することと、吸光度の上昇が観測された。これは液体の水の存在の可能性を示唆しており、これまで発見が容易でなかった相変化途中の過冷却水を見ている可能性が大きい。 <結果III>大気圧でのメタンハイドレートの相変化は氷点の下で進行するため、氷との相変化も調査する必要がある。そこで作成方法を変えた氷試料の氷点下での変化をテラヘルツ波分光で観測したところ、氷点下においても氷試料の体積が変化することが観測された。これまで詳細な報告の少ない氷の昇華を見ている可能性があり、氷に対する新しい知見が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非平衡温度圧力条件の下のメタンハイドレート試料をテラヘルツ波分光で観測することによって試料体積が変わることが観測されている。またその際に吸光度が上昇することも観測されている。詳細な分析が今後必要であるが、液体の水(過冷却水)の関与の可能性が大きいと思われる。この実験結果は我々が予想するものと一致しており、メタンハイドレート相変化途中において液体の水の存在を実証することで未解明現象の説明が合理的に行えるようになる。 さらにメタンハイドレート以外のガスハイドレートにおいても、その光学特性の分析を進めることができ、数式を用いたモデルで示すことができた。これまで報告例の少なかったテラヘルツ領域におけるガスハイドレートの知見を得ることを達成しており、この情報はテラヘルツ波工学を用いた応用計測にも役立つ情報となる。 また氷の昇華についてもテラヘルツ波分光で観測することができ、これまで他の分析方法では得られなかった情報が得られている。ガスハイドレートの相変化において氷の分析は非常に重要であり、本課題の推進において有益な情報が得られている。 以上より、研究計画における項目についての進捗はおおむね順調に進んでおり、さらに予想外の有益な実験結果も得られているため、上記の評価を選択している。
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Strategy for Future Research Activity |
メタンハイドレート分解時における水の存在らしきものが見えている。テラヘルツ波分光では光学特性の実部と虚部から解析可能であるため、誘電率や吸光度といった情報が得られる。さらなる情報を得るために試料の粒径を変化させたものの測定を行いたい。さらに測定圧力条件や帯域も広げて測定を行い、水の状態について観測を行う。 他の実験手段を用いて情報量を増やすことも計画したい、たとえばガス流量からメタンハイドレートの分解過程の観測を行い、その時に過冷却水の安定性をコントロールするような実験を行うことで、水の検証を行うことで多角的に解析を行う。 さらに氷の昇華もこれまでの観測で見えている。氷は自然を形成する非常に重要な情報であり、この氷に対する知見を新たに得ることは科学においても貢献の大きい研究であると思われる。 以上より、ガスハイドレートを含めた水素結合性結晶へと測定対象を広げることで自然科学に対する研究を推進したいと考えている。
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Research Products
(16 results)