2017 Fiscal Year Annual Research Report
Highly functionalized p-i-n type quantum dot based hybrid solar cells
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17H03536
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐川 尚 京都大学, エネルギー科学研究科, 教授 (20225832)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 太陽電池 / 量子ドット |
Outline of Annual Research Achievements |
金属硫化物半導体のナノ粒子を有機低分子化合物で被覆したコロイダル量子ドットを作製し、太陽電池のp層とn層の間のintrinsicなi層としてこの量子ドットを挿入したp-i-n型量子ドットハイブリッド太陽電池を組み立て、光電変換効率の向上を検討した。すなわち、亜鉛、銀およびインジウムの複合金属硫化物や硫化鉛からなる粒径5 nm程度の均質なサイズの量子ドットを作製した。硫化アンチモンについても検討し、ランタノイド系列の元素や亜鉛をドープする材料設計も行った。これらの量子ドットの表面には、長鎖アルキル基のついたアミンが配位子として存在し、トルエン等の有機溶媒中での分散性を保持している。この吸収および発光スペクトル特性を調べた後、太陽電池を構築するための薄膜を作製した。 薄膜の作製方法に関しては、当初はミストスプレー法を計画していたが、スプレー時の原料の損失量が著しいため、対流沈着塗布法と結晶化促進添加剤を組み合わせた新たな薄膜作製法を行ったところ、成膜時の原料の節約に大いに貢献した。得られた薄膜のX線回折測定により結晶性を調査するとともに、光電子スペクトル測定と吸収スペクトル測定結果から、エネルギーダイヤグラムを描き、太陽電池を構成する他の部材、例えば、スズドープ酸化インジウム、酸化チタン、ポリチオフェン、あるいは他の有機半導体や無機半導体とのバンドギャップ調整を行ない、光電変換特性を高めるような成膜条件を検討した。 また、量子ドットの吸収波長と発光波長の選択とシリコン太陽電池や有機薄膜太陽電池の活性層の光電流発生効率が最大となる吸収波長領域とのマッチングによる量子収率向上に関する予備検討も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
亜鉛、銀およびインジウムの複合金属硫化物や硫化鉛からなる粒径5 nm程度の均質なサイズの量子ドットの作製は、透過型電子顕微鏡観察や薄膜のX線回折測定により確認した。ランタノイド系列の元素や亜鉛をドープした硫化アンチモンの作製と評価については、アメリカ電気化学会で査読のプロセスを経て口頭発表すると共に、トランスアクションズにも掲載済みである。 一方、薄膜の作製方法に関しては、当初はミストスプレー法を計画していたが、スプレー時の原料の損失量が著しいため、対流沈着塗布法と結晶化促進添加剤を組み合わせた新たな薄膜作製法を行い、成膜時の原料の節約に大いに貢献することを見出した。それらの成果は査読を必要とする3つの国際会議で段階的に発表されると共に、プロシーディングス(IOP Conference Series: Materials Science and Engineering)や学術誌(Organic Electronics)に掲載された。とりわけ、平成29年10月末から11月初めにかけて開催されたMRS Thailand International Conferenceにおいては、best oral presentation awardを受賞し、高い評価を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
コロイダル量子ドットに関して、長鎖アルキル基のついたアミンを配位子とするだけでなく、長鎖アルキル基のついたカルボン酸あるいは臭素や塩素のついたハロゲン化アルキルアンモニウム、あるいは4級化したピリジニウム部位をもつピリジン等への配位子置換を系統的に実施し、分散性を保持させた上で、その吸収および発光スペクトル特性を調べ、バンドギャップ調整やキャリア移動特性等を精査する。とりわけ不動態化の促進と、キャリア移動度の増大との相関を調べ、太陽電池の光電変換効率向上への効果を検討する。 薄膜作製プロセスについては、継続して改良型対流沈着塗布法を採用する。すなわち均質な粒子径のコロイダル量子ドットを二次元的に最密充填させ、三次元的に階層的に並べた超格子構造で多重積層のp-i-n型量子ドットハイブリッド太陽電池を組み立てる。格子欠陥や不純物準位でのトラップの再結合の抑制と、太陽電池を構成する他の材料との接合の不具合の解消について、種々の方法により調査するとともに、太陽電池の光電変換特性を高めるような成膜条件を検討する。 一方、量子収率の増大については、コアシェル構造の量子ドット作製を前年度より継続して検討する。また、量子ドットの吸収波長と発光波長の選択とシリコン太陽電池や有機薄膜太陽電池の活性層の光電流発生効率が最大となる吸収波長領域とのマッチングによる量子収率向上に関する前年度の予備検討を基に、新たに作製する量子ドットの最適化を進める。
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Remarks |
1st MRS Thailand International Conference (2017/10/31-11/03, Chiang Mai, Thailand) において、Anusit Kaewprajak(博士2年学生)が best oral presentation award を受賞
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