2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17H03545
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
濱口 航介 京都大学, 医学研究科, 講師 (50415270)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | システム神経科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳の発達により,知識や行動様式などの情報を次世代に伝達できるようになった.言語や音楽のような複雑な運動パターンの継承には,他者の運動パターンの記憶と,多数の反復練習からなる “模倣学習”が必要である.我々は模倣学習の本質は、運動情報およびそのフィードバックの情報が、内的報酬に変換される仕組みであると考えている。例えば言語の取得には、まず正しい発音を獲得することが必要である。まず正しい発音(テンプレート記憶)を記憶したのちには、舌や呼気の協調運動の良し悪しを、音声フィードバックを通じて評価する必要がある。この聴覚フィードバックは時間差をもって到達する。遅延して得られる運動の評価がどのようにして行動の改善につながるのか、運動の評価は栄養報酬と同じような脳領域で処理されているのかは、明らかではない。 そこで初年度では、これまでに申請者が研究を行ってきた聴覚回路からどのように報酬信号が生成されるのかをテーマとして研究を行った。動物はまず聴覚刺激を短期記憶し、一定の遅延後に応答し、水のでるスパウト左右のどちらかを舐める遅延選択課題を学習させた。さらにカルシウムセンサを発現させた大脳皮質から二光子顕微鏡を用いて観察を行った。二光子観察により、最大で数百の細胞が一度に観察できるが、これを人手で解析することは非常に難しい。そこで半自動でカルシウム活動を示す神経細胞を発見し、神経活動を解析するプログラムを開発した。現在、行動との関係を解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度の計画では、どの程度カルシウムセンサが効率よく導入できるか不明であった。しかし研究室内でウィルスを作成することで、高濃度の新鮮なウィルスを用意することが可能になり、ほとんどの動物個体において高い発現効率を得ることができ、実験効率の向上につながった。また所定の基準を満たす程度に課題を学習した動物を、どの程度効率的に準備できるかは未知数であったが、課題学習装置の自作による並列化と、学習プロトコールの最適化により、一定数の動物個体を供給できる体制が整った。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画では、実験動物として小鳥を中心に実験を行う計画であった。しかし、より遺伝子操作が容易かつ、様々な細胞タイプを選択性操作可能なドライバーラインが準備されているげっ歯類(マウス)を中心に動物実験を行う方針に変更した。模倣学習の本質が、運動(行動)およびそのフィードバックの情報が、内的報酬に変換される仕組みであるならば、哺乳類であるげっ歯類を用いた実験系は、より人間にとって関連性のある情報を提供できると考えている。
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