2017 Fiscal Year Annual Research Report
中枢神経シナプス前終末における小胞動態の超解像ライブイメージング
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17H03548
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
緑川 光春 東京女子医科大学, 医学部, 准講師 (60632643)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | シナプス / 開口放出 / イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトをはじめとする多細胞生物では細胞同士の協調が重要であり、そのための細胞間情報伝達機構が高度に発達している。開口放出機構はホルモン、神経伝達物質、酵素などといった様々な化学物質が細胞から放出される際に用いられる共通の分泌機構であり、この機構に異常が生じると精神・運動疾患、糖尿病、アレルギーなどの様々な疾患を引き起こすため、その全貌を明らかにすることはこれらの病態メカニズムの理解や治療戦略の開発にもつながる重要な基礎研究である。申請者は生体内の数ある分泌現象の中でも最も速い、中枢神経からの開口放出に着目し、全反射蛍光顕微鏡を用いた光学的測定を試みた。全反射蛍光顕微鏡はz軸上で数十nm程度の分解能があり、ライブイメージングが可能な光学的検鏡法でありながら電子顕微鏡に迫るレベルでの分解能を実現している。申請者らは中枢神経系シナプスの大きな特徴である可塑性を持ち、単一シナプス小胞の開口放出が測定可能な中枢神経系シナプス標本を模索し、海馬苔状線維終末において単一シナプス小胞の可視化が可能であることを発見した。海馬苔状線維終末はCA3錐体細胞にシナプスを作っているが、神経線維の連続刺激で伝達物質放出量が増大し、それが数時間の単位で持続する長期増強を起こすことが知られている。全反射蛍光顕微鏡を用いた超解像ライブイメージングによって海馬苔状線維終末におけるシナプス小胞の動態を詳細に測定し、さらには可塑性変化や発達に伴うシナプス前部の機能変化を明らかにすることを目指した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初は研究期間の最初の二年をかけて実現する予定であった海馬苔状繊維終末における単一シナプス小胞開口放出の可視化、および海馬苔状繊維終末における可塑性誘導による単一シナプス小胞動態の変化については計画していた以上に研究の進展状況がよく、必要な実験結果を得て論文としてまとめることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
可塑性を示す海馬苔状繊維終末における単一シナプス小胞の動態を詳細に検討することができたので、今後は発達に伴うシナプス前終末からの開口放出の変化に注目して研究を行いたい。発達に伴ってダイナミックな機能変化が生じる視床における内側毛帯繊維の軸索終末からの開口放出に着目し、ここからの開口放出機構が発達に伴ってどのように変化していくのかを詳細に追及したい。
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