2018 Fiscal Year Annual Research Report
腸管神経前駆細胞における網状細胞移動の分子機構解明
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17H03550
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
榎本 秀樹 神戸大学, 医学研究科, 教授 (00360511)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 細胞移動 / 細胞極性 / 神経分化 / 神経回路形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
腸管神経系は、神経前駆細胞が網目状構造を作りながら全腸管壁を覆っていくことで形成される。我々は、RET活性化により惹起されるPLCgamma経路の活性化が、網状細胞移動を制御していることを発見した。本研究では、RETに活性化されるPLCgamma経路解析を起点に、腸管神経前駆細胞による網状細胞移動の機構解明を目指す。 PLCgamma活性化を欠損するRET(Y1015F)ENCCの移動様式の解析のために、RETの条件的ノックアウトmCherry レポーターマウス(Retflox-Ret-mCherry/+)とRet(Y1015F)マウスを交配したRetflox-Ret-mCherry/Y1015Fにおいて、CAG-CreEsrにより一部のENCCのみをRETmCherry/Y1015Fに変換して細胞の移動を追跡した。その結果、RET(Y1015F)ENCCは周辺のENCCとの接触時間が短く、正常ENCCに比して丸い形状を呈していた。この結果はPLCgamma活性化の欠損により、ENCCの細胞接着と極性が同時に侵されることを示唆していた。 Ret(Y1015F)マウスは腎臓・尿管の異常のために生後すぐ死亡するために、網状細胞移動の異常が最終的にどのように腸管神経系の構築を障害するか、その全貌は分かっていない。このためにRetflox-Ret-mCherry/Y1015Fと神経堤細胞特異的Creドライバーマウス(P0-CreまたはWnt1-Cre)を交配して、神経特異的Ret(Y1015F)マウスを作製した。その結果、このマウスでは腎臓・尿管の発生異常が回避されたが生後早期に死亡した。組織解析では特定の神経サブタイプの減少が認められた。以上の結果は、PLCgamma経路が神経サブタイプ分化を制御して適切な神経回路形成に寄与していることを示唆していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
生体レベルでの解析は順調に進んでいたが、PLCgammaの下流分子を同定するための細胞を調整する段階でRET受容体の発現が消失するという予想外のトラブルに遭遇した。細胞の調整法を変えるなどさまざまな検討を行った結果、発現減少がマウスにノックインしたRET cDNAのpolyAに問題が合った可能性が明らかとなった。この問題解決のために新たなRET(Y1015F)マウスの作製を行うこととなった。新しいマウスはゲノム編集によりマウスRet遺伝子上に点変異を導入する形で作製した。このライン作製においても点変異がなかなか挿入できないなどのトラブルがあり、年度末にようやくF0ファウンダーが得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
ENCCの培養系および腸管の器官培養系を用いて、RET(Y1015F)マウスとコントロールマウスにおける分子の発現、活性化、局在の違いを探索する。PLCgammaの下流で活性化されるカルシウムシグナルの変化の有無について解析する。RET(Y1015F)およびコントロールマウスのENCCをカルシウム指示薬であるFra-2/AM存在下に培養し、GDNF刺激後の細胞内カルシウムの上昇を測定する。また、RET(Y1015F)およびコントロールマウスで、カルシウム感受性蛍光タンパク質GCAMPをENCCに発現させ、RET(Y1015F)およびコントロールマウスの腸管の器官培養下にENCCのカルシウムシグナルと移動様式の相関を解析する。オシレーションおよびカルシウムトランジェントの動態を観察し、特に後者においては細胞内局在と持続時間を定量化し、細胞移動の性質との相関を解析する。さらに一過性のカルシウム上昇についてはチャネルを介した細胞外由来であるか、小胞体由来であるかを、阻害剤を用いて識別する。 RET Y1015Fマウスおよびコントロールマウスより腸管神経前駆細胞を採取後、培養しmyc遺伝子により不死化することにより細胞を大量培養する(既に大量培養システムは確立済み)。細胞をGDNF刺激した後、タンパクおよびRNAを回収しリン酸化プロテオミクス解析によりリン酸化レベルに差があるタンパク群を同定する。
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Research Products
(9 results)