2018 Fiscal Year Annual Research Report
骨軟部腫瘍の網羅的ゲノム解析に基づく遺伝子異常の機能解析と新規治療薬探索
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17H03596
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
平田 真 国立研究開発法人国立がん研究センター, 中央病院, 医員 (50401071)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 骨軟部腫瘍 / ゲノム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
H30年度は以下の研究を遂行した。 i. 解析対象とする遺伝子異常の選定:脱分化型脂肪肉腫のゲノム解析で同定したDNM3OS融合遺伝子の存在を高分化型脂肪肉腫において確認した。高分化型脂肪肉腫17検体について確認したが、DNM3OS融合遺伝子は検出されず、本融合遺伝子が脱分化型脂肪肉腫特異的なマーカーである可能性が示唆された。また、脱分化型脂肪肉腫においてコピー数依存的に遺伝子発現が変化する遺伝子として、新たにG0S2、DGAT2などの遺伝子を確認した。 ii.遺伝子異常の細胞レベルでの機能解析:脱分化型脂肪肉腫の腫瘍検体を用いて、上記遺伝子異常に着目しその遺伝子異常と発現変化との関連について解析を行った。G0S2、DGAT2などの遺伝子は脱分化型脂肪肉腫の組織中の脱分化成分(高悪性成分)においてのみ発現変化を伴うコピー数異常を示し、高分化成分(脂肪組織に近い高度に分化した中間悪性成分)においてはコピー数異常を認めなかったことから、これらの遺伝子が腫瘍の悪性転化に関与している可能性が明らかとなった。 iii. 遺伝子異常のマウスモデルでの機能解析:既に確立しているIDH1/2変異を発現する内軟骨腫モデルマウスとTrp53-floxマウスとの交配を進め、機能解析・ドラッグスクリーニングのための軟骨肉腫モデルマウスの準備を進めた。 iv. 新規治療標的候補となった遺伝子異常に対するドラッグスクリーニング:ⅲにより作成を進めた軟骨肉腫モデルマウスにおいて、腫瘍の得られたものより順次、腫瘍組織、軟骨組織を採取した。腫瘍組織の一部を用いて組織型を確認し、得られた腫瘍組織が軟骨形成を伴う未分化多形肉腫の像を呈する腫瘍であることや類骨形成を伴う骨肉腫様の腫瘍であることを確認した。さらに、今後のRNAシークエンス解析のため、得られた腫瘍組織、軟骨組織の一部よりRNAを抽出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度に引き続き、脱分化型脂肪肉腫に特徴的な遺伝子異常について候補の選定、機能解析を進めた。その結果、遺伝子異常として12q15領域の増幅という共通の特徴を持つ高分化型脂肪肉腫と脱分化型脂肪肉腫との違いとして、DNM3OS融合遺伝子やG0S2、DGAT2等のコピー数異常を伴う遺伝子発現変化が明らかとなり、これらが脱分化型脂肪肉腫におけるマーカーとなり得ること、また悪性転化において何らかの役割を果たしている可能性のあることを示した。 他の組織型として腱滑膜巨細胞腫についての検討も実施した。本組織型のゲノム解析で同定されたCSF1融合遺伝子やCBL遺伝子変異についての機能解析も実施したが、現状CSF1融合遺伝子、CBL遺伝子変異による浸潤能、増殖能等の細胞機能の変化の確認には至っていない。 マウスモデルでの機能解析としてIDH1/2変異発現マウスを用いた軟骨肉腫モデルマウスの作成を進めた。本モデルマウスについては、既に確立が進んでいたものの、軟骨形成不全による胎生致死、死産個体を多く認め、予想以上に解析に必要な遺伝型の成体マウスが得られないという事態が生じたため、解析に必要な検体数確保に時間を要した。また、得られた腫瘍検体の半数以上の個体は脊椎発生であった。この場合、腫瘍径が比較的小さい段階で麻痺を生じ、その時点でエンドポイントを迎えるため、初代培養を確立するための組織量が不十分であるものが多く、初代培養の確立に至っていない。得られた腫瘍組織を最大限活用するため組織学的解析を進めるとともに、腫瘍の凍結組織を確保し、ゲノム解析のための核酸抽出、評価を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き骨軟部腫瘍ゲノムコンソーシアムの解析基盤、解析結果を利用しながら、脱分化型脂肪肉腫、腱滑膜巨細胞腫以外の他の組織型についても同様にその組織型に特徴的、特異的な遺伝子異常に着目しながら、治療標的・分子マーカーの同定を目指して機能解析を進める予定である。現状、骨軟部腫瘍ゲノムコンソーシアムでは骨肉腫、軟骨肉腫、デスモイドなどの組織型について、組織の収集、ゲノム解析を進められており、一部では特徴的な遺伝子変異や遺伝子発現パターン等が明らかとなってきている。こうした遺伝子について機能解析を引き続き実施する予定である。 ヒトIDH1/2変異を軟骨組織特異的に発現する軟骨肉腫モデルマウスについては、既にその腫瘍発生を確認し、モデルとして確立したものであったが、機能解析、ドラッグスクリーニングに向けた解析検体数の確保という点で少し遅れが生じている。引き続きマウスの交配を継続し、必要検体数の確保を進める予定である。また現状、モデルマウス由来の軟骨肉腫の初代培養の確立には至っていないが、四肢に発生した比較的サイズの大きな腫瘍が得られた場合には改めて初代培養を進め、ドラッグスクリーニングに向けた準備を進めていく予定である。また、これらのモデルマウスで得られた腫瘍組織の凍結検体確保を進めており、腫瘍組織、軟骨組織からの核酸抽出を進めている。一定数が得られた段階でRNAシークエンスをはじめとするゲノム解析を実施する予定であり、ゲノム解析の結果から、ドライバー変異の同定、腫瘍進展に関わるシグナル伝達経路の同定を進め、候補となる薬剤の選定を進めることとする。
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Research Products
(21 results)