2017 Fiscal Year Annual Research Report
頭尾軸に沿って異なる体幹部組織を産み出す体軸幹細胞の制御
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17H03607
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
竹本 龍也 徳島大学, 先端酵素学研究所(オープンイノベ), 教授 (30443899)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 細胞分化 / 遺伝子発現制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
脊椎動物の胚発生では、まず頭部の原基の形成につづいて、体幹部が前方から後方へ順次作られる。先行研究において、後者の過程が神経系と中胚葉への2つの分化能力をもつ「体軸幹細胞」が前駆体となって進行することを示した。この体軸幹細胞は、頸-胸-腰-尾部といった頭尾軸に沿って異なる性質を持つ分化細胞を供給する。本研究では、「体軸幹細胞」がどういった遺伝子制御ネットワークによって維持されるのか、また、発生の進行とともに、どういった遺伝子制御ネットワークの変化によって頭尾軸に沿って異なる神経板または中胚葉細胞を産み出すのかを明らかにする。本研究は、細胞分化の仕組みを核内ゲノム状態の変化としてとらえるという特徴がある。本研究によって、新しい細胞運命の制御機構を明らかにできると考えている。 今年度は、胚を細かく解剖することで、体軸幹細胞が存在する領域(原条周辺のエピブラスト)と、そこから派生する細胞が存在する領域(神経板および中胚葉)とを分離してRNA-seqによって遺伝子発現プロファイルを解析した。それぞれの領域で特徴的に発現する遺伝子の抽出を行い、その発現を詳細に解析した。並行して、レーザーマイクロダイセクションおよびセルソーターを用いて、体軸幹細胞の指標であるSox2エンハンサーN1を活性化する細胞を分離して、発現解析を行なった。同定したいくつかの因子については、遺伝子欠損マウス胚を作成してその重要性を解析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
遺伝子発現解析の対象とするサンプル調整法の確立に予定以上の時間を要した。具体的には、詳細な解剖技術の確立や、セルソーターやレーザーマイクロダイセクションを用いて行う特定細胞の単離技術の確立に時間を要した。このため、遺伝子発現解析の完了も予定より遅れた。結果として、当初予定していた、体軸幹細胞に特徴的な遺伝子(候補)の解析に若干の遅れが見られる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究で同定した遺伝子群のうち、体軸幹細胞の維持や分化を制御する遺伝子制御ネットワークの解析を行う。まず、候補遺伝子の欠損マウス胚を作製して、体軸の伸長に影響を与える因子を同定する。同定された遺伝子群のうち転写因子に特に注目して研究を進める。同定した主要な転写因子の標的遺伝子をChIP-seq等を用いて解析すると共に、標的遺伝子の発現解析を行う。体軸幹細胞をはじめとする「多分化能状態にある細胞系列」では遺伝子発現プロファイルでは規定できないゲノム制御状態が存在すると予想している。この点についても注意を払いつつ研究を進める。
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Research Products
(2 results)