2019 Fiscal Year Annual Research Report
マルチオミクス解析によるクマムシ乾眠機構の全体像の解明
Project/Area Number |
17H03620
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
荒川 和晴 慶應義塾大学, 環境情報学部(藤沢), 准教授 (40453550)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | クマムシ / 乾眠 / トランスクリプトーム / プロテオーム |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに乾眠誘導のシグナリング経路や、乾眠における防御に関わるタンパク質を明らかにしてきたが、これまでの実験から紫外線照射によるダメージを与えてから数時間の間クマムシの乾眠能力が著しく落ち、ただし時間経過と共にまたこれが正常に戻ることを見出しており、修復も重要なコンポーネントであることが明らかになりつつある。そこで、これまでに紫外線照射によって交叉耐性が失われるタイムポイントを含む時系列なトランスクリプトーム解析を行い、このタイムポイントで発現変動していて、かつ乾眠でも発現が誘導される遺伝子を網羅的にスクリーニングしたところ、新規のクマムシ固有かつ、乾眠後復帰時に高発現となり、さらにゲノム中に多数のパラログが存在する新規の遺伝子ファミリーを同定した。さらに、これまでに得られている50種程度のクマムシゲノムにおいて比較解析した結果、この新規遺伝子ファミリーは他の防御系タンパクとは異なり、異クマムシと真クマムシという綱にまたがって保存されていることが明らかとなった。この修復にクリティカルなタイムポイントにおけるクマムシの細胞組織の変化を透過型電子顕微鏡で観察したところ、特異的なミトコンドリアの形態異常が観察された。このことは、乾眠や紫外線照射によって引き起こされる酸化ストレスが主なダメージである可能性を示唆しており、今回発見した新規遺伝子ファミリーがこの酸化ストレスに対する耐性をもたらしている可能性が示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
個別の分子機構まで掘り下げきれていないものの、シグナリング・防御・修復のそれぞれにおいて新たな因子を含むパスウェイの全体像を明らかにしつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに明らかになった遺伝子や経路と、約50あるクマムシゲノムを用いて、まだ捉えきれていない因子を網羅的にスクリーニングする。さらに、今回見つかった修復に関わると考えられる遺伝子をはじめ、いくつかの新規遺伝子に関しては哺乳細胞を用いて発現させ、機能解析を進める。
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[Presentation] Comparative genomics of two tardigrades with different cryptociotic capacities2019
Author(s)
Yuki Yoshida, Kazuharu Arakawa Yuki Yoshida, Georgios Koutsovoulos , Dominik R. Laetsch, Lewis Stevens, Sujai Kumar, Daiki D. Horikawa, Kyoko Ishino, Shiori Komine, Takekazu Kunieda, Masaru Tomita, Mark Blaxter ,Kazuharu Arakawa
Organizer
The 20th International Conference on Systems Biology
Int'l Joint Research
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[Presentation] ヨコヅナクマムシとドゥジャルダニャマクマムシの比較ゲノム解析2019
Author(s)
吉田祐貴, Koutsovoulos G., Laetsch D. R., Stevens L., Kumar S., 堀川大樹, 石野響子, 小峰栞, 國 枝武和, 冨田勝, Blaxter M., 荒川和晴
Organizer
2019年度 慶大先端生命研-薬学研究科 合同リトリート「総合システム適塾」
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