2017 Fiscal Year Annual Research Report
テトラヒメナの二核性を利用した核機能分化における核膜孔複合体機能の解明
Project/Area Number |
17H03636
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
原口 徳子 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所フロンティア創造総合研究室, 主任研究員 (20359079)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 細胞・組織 / 生体分子 / 蛋白質 / 発生・分化 / 細胞核 / 核膜孔複合体 |
Outline of Annual Research Achievements |
繊毛虫テトラヒメナには、ひとつの細胞内に、大核・小核という構造と機能の異なる2種類の核が存在し、通常の一核性生物では解き得ない命題を問うことができる。本研究課題は、大小核を有する二核性生物テトラヒメナの生物学的特徴を利用して、核機能分化に関与する核膜孔複合体の機能を明らかにするものである。そのために、大小核に特異的な核膜孔複合体構成タンパク質(ヌクレオポリン)の機能の解析を行う。大小核特異的なヌクレオポリン(MacNup214/MicNup214, MacNup153/MicNup153, Pom121/Pom82)のうち、Nup214に関しては、MacNup214とMicNup214の分子ドメインの特異性や違いに着目し、ドメイン解析を行った。目的の各ドメインにGFPを融合させた融合タンパク質をテトラヒメナ細胞で発現させ、蛍光顕微鏡で観察して、その核局在を解析した。その結果、それぞれ大核と小核に局在するのに必要な核局在化ドメインを決定することができた。また、免疫電子顕微鏡法を用いて、核膜孔複合体内での位置を決定したところ、MacNup214とMicNup214は核膜孔複合体の細胞質側に、MacNup153とMicNup153は核内側に存在したのに対して、膜ヌクレオポリンPomに関しては、大核特異的なPom121は核内側にのみ局在し、一方、小核特異的なPom82は細胞質側にのみ局在するなど、核膜孔複合体内での位置に大きな違いがあることが分かった。これらの大小核ヌクレオポリンの核分化過程での役割を調べるために、遺伝子ノックアウトを行い、変異体の形態や分化過程の進行を検討した。その結果、増殖過程や分化過程に異常が見られたことから、核分化過程を含むライフサイクルに何らかの役割があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、大小核を有する二核性生物テトラヒメナの生物学的特徴を利用して、核機能分化に関与する核膜孔複合体の機能を明らかにするものである。以下の2項目の解析を行った。 項目1)大小核特異的ヌクレオポリンの機能の解析: MacNup214とMicNup214の様々なドメインにGFPを融合し、テトラヒメナ細胞で発現させ、その細胞を蛍光顕微鏡で観察することによって、大小核の核膜孔に局在するドメインを決定した。また、免疫電子顕微鏡法を用いて、核膜孔複合体内での位置を決定したところ、MacNup214とMicNup214は核膜孔複合体の細胞質側に、MacNup153とMicNup153は核内側に存在した。それに対して、膜ヌクレオポリンPomに関しては、大核特異的なPom121は核内側にのみ局在したのに対し、小核特異的なPom82は細胞質側にのみ局在するなど、核膜孔複合体内での位置に大きな違いがあることが分かった。従って、これらのpomヌクレオポリンの働きはかなり異なっていると考えられる。これらの大小核ヌクレオポリンの核分化過程での役割を調べるために、遺伝子ノックアウトを行い、変異体の形態や分化過程の進行を検討した。その結果、増殖過程や分化過程に異常が見られたことから、核分化過程に何らかの役割があることが示唆された。 項目2)核分化過程における大小核特異的ヌクレオポリンの動態の解析: MacNup214およびMicNup214に対するGFP融合タンパク質をテトラヒメナ細胞で発現させ、核分化を誘導し、受精核から大核・小核へと核分化する過程を生細胞蛍光イメージング法で観察した結果、核分化過程の特定の時期に特に局在が強いことが分かった。 このように、研究は順調に進んでいることから、おおむね良好と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は、大小核を有する二核性生物テトラヒメナの生物学的特徴を利用して、核機能分化に関与する核膜孔複合体の機能を明らかにするものである。今後は、以下のように進める予定である。 項目1)大小核特異的ヌクレオポリンの機能の解析:大小核のいずれかにのみ特異的に局在するヌクレオポリンのうち、まだ解析していないものについて解析を行う。核膜孔局在に重要なドメインに関しては、核膜孔内のどこに局在するかを、免疫電験法を用いて解析する。これらの解析に加え、それぞれの大小核ヌクレポリンの変異体を作製して、その表現型を解析することによって、これら大小核特異的ヌクレオポリンの機能解析を進める。さらに、重要なドメインの機能を調べるために、そのドメインだけを発現する細胞株を作製し、野生型やノックアウト株の表現型と比較することで、各ヌクレオポリンタンパク質、およびその特定ドメインの役割を調べる。特に、予備実験の結果、核分化に重要な役割を担う可能性が高いMicNup214とPom82の解析を中心に行う。 項目2)核分化過程における大小核特異的ヌクレオポリンの動態の解析:核分化過程における大小核それぞれに特異的なヌクレオポリンの動態を明らかにする。特に、小核特異的なPom82を中心に解析を行う。Pom82-GFPタンパク質をテトラヒメナ細胞で発現させ、核分化を誘導し、受精核から大核・小核へと核分化する過程を生細胞蛍光イメージング法で観察する。必要に応じて、独自に開発した電顕光顕統合イメージング法(Live CLEM)を用いて、特定の分化ステージでの核膜孔複合体・核膜構造を解析する。
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Research Products
(26 results)