2018 Fiscal Year Annual Research Report
テトラヒメナの二核性を利用した核機能分化における核膜孔複合体機能の解明
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17H03636
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
原口 徳子 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所フロンティア創造総合研究室, 主任研究員 (20359079)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 細胞・組織 / 生体分子 / 蛋白質 / 発生・分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
繊毛虫テトラヒメナには、ひとつの細胞内に、大核・小核という構造と機能の異なる2種類の核が存在し、通常の一核性生物では解き得ない命題を問うことができる。本研究課題は、大小核を有する二核性生物テトラヒメナの生物学的特徴を利用して、核機能分化に関与する核膜孔複合体および核特異的な核移行の機能について明らかにするものである。今年度は、大小核それぞれに特異的な核移行シグナルを検討した。大核にのみ局在するヒストンH1タンパク質と小核にのみ局在するMLHタンパク質のドメインを解析した。その結果、ヒストンH1からは、大核特異的な核移行シグナルとしてN末端側(13-30)とC末端側(101-130)の2箇所に核移行に必要なドメインを同定した。また、MLHタンパク質の解析から、小核特異的な核移行シグナルとしてN末端側にあるδ領域(90-189)とC末端側にあるβ領域(213-231)の2箇所を同定した。 大小核特異的ヌクレオポリンを検索する一環として、テトラヒメナで発現する遺伝子に対するin silico解析と分子構造予測から、ヒトLem2の相同タンパク質と考えられる核膜タンパク質を同定した。そのGFP融合タンパク質をテトラヒメナ細胞で発現させたところ、ひとつは大小核の核膜に、もうひとつは小核の核膜にのみ局在した。これらの解析から、大小核核膜に局在するものをLem2、小核核膜にのみ局在するものをMicLem2と命名した。免疫電子顕微鏡法を用いて、核膜内での局在を検討したところ、MicLem2は核膜孔複合体に局在することが分かった。MicLem2の核膜孔局在に重要なドメインを検討したところ、N末端側が重要であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、大小核を有する二核性生物テトラヒメナの生物学的特徴を利用して、核機能分化に関与する核膜孔複合体および核特異的な核移行制御の機能を明らかにするものである。 本年度は、大核にのみ局在するヒストンH1タンパク質と小核にのみ局在するMLHタンパク質のドメイン解析を行い、大小核それぞれに特異的な核移行シグナルを明らかにすることに成功した。この核移行シグナルを利用することで、今後、大小核のそれぞれに特異的に外来分子を導入することが可能になると考えられため、今後の解析に有用である。 大小核特異的ヌクレオポリンを同定する一環として、テトラヒメナ遺伝子に対するin silico解析と分子構造予測から、ヒトLem2の相同タンパク質と考えられる核膜タンパク質2種類(Lem2とMicLem2と命名)を発見した。これは、繊毛虫類で発見された初めての核膜タンパク質である。特に、小核特異的な核膜タンパク質MicLem2は、小核の核膜孔複合体に局在することを明らかにした。さらに、その小核核膜孔局在に、N末端側のドメインが関与することを明らかにすることができた。これらの核膜タンパク質について、核分化過程における局在変化を、蛍光イメージングを用いて検討したところ、Lem2とMicLem2では、全く異なる局在変化をすることが明らかとなった。今回の発見で、これらの核膜タンパク質は、大小核の核分化過程に関与する可能性が示唆された。 このように、研究は順調に進んでいることから、おおむね良好と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は、大小核を有する二核性生物テトラヒメナの生物学的特徴を利用して、核機能分化に関与する核膜孔複合体の機能を明らかにするものである。今後は、以下のように進める予定である。 大小核特異的ヌクレオポリンの機能の解析:大小核のいずれかにのみ特異的に局在するヌクレオポリンのうち、まだ解析していないものについて解析を行う。核膜孔局在に重要なドメインに関しては、Lem2やMicLem2で行ったように、免疫電子顕微鏡法を用いて解析する。これらの解析に加え、それぞれの大小核ヌクレポリンの変異体を作製して、その表現型を解析する。これらの解析を行うことで、大小核特異的ヌクレオポリンの機能を明らかにする。さらに、重要なドメインの機能を調べるために、そのドメインだけを発現する細胞株を作製し、野生型やノックアウト株の表現型と比較することで、各ヌクレオポリンタンパク質、およびその特定ドメインの役割を調べる。 核分化過程における大小核特異的ヌクレオポリンの動態の解析:核分化過程における大小核それぞれに特異的なヌクレオポリンの動態を明らかにする。特に、小核特異的なヌクレオポリンPom82-GFPを中心に解析を行う。Pom82-GFPタンパク質をテトラヒメナ細胞で発現させ、核分化を誘導し、受精核から大核・小核へと核分化する過程を生細胞蛍光イメージング法で観察する。必要に応じて、独自に開発した電顕光顕統合イメージング法(Live CLEM)を用いて、特定の分化ステージでの核膜孔複合体・核膜構造を解析する。
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Research Products
(13 results)