2017 Fiscal Year Annual Research Report
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17H03643
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
竹田 一旗 京都大学, 理学研究科, 准教授 (30332290)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | タンパク質 / 結晶 |
Outline of Annual Research Achievements |
外殻電子の分布や電荷、水素原子位置、分極状態は、タンパク質分子の物性や反応性の理解のために重要な情報であるが、これまでに解析例はほとんどない。本研究では、緑色蛍光タンパク質(GFP)の基底状態および光反応中間体について、超高分解能X線電荷密度解析および中性子線結晶構造解析をおこない、外殻電子の分布や原子の電荷、水素原子位置、分極状態およびそれらの光反応による変化を測定して、実験的に決定した微細な構造情報から発光機構を解明するのが本研究の目的である。しかしながら、野生型GFPは発色団近傍に構造多型を持ち、A型とB型の構造を持つ分子が、3:1の割合で混在している。これらの発光機構の詳細は異なるため、それぞれについて研究を進めなければならない。そこで本研究では、A型構造の解析にはT203I変異体を、B型構造の解析にはS65TおよびE222Q変異体を使用して回折実験に使用する結晶を作製し、A型およびB型構造を持つ変異体について、高分解能(最高分解能<1.0 Å)X線結晶構造解析をおこなった。また、予備的な中性子線回折実験をおこなった。さらには、微結晶を磁場配向させた擬似単結晶を使用して構造解析をおこなうことができた。今後、プロトンを含む全水素原子を観察するために、中性子線解析を完成させる。また、蛍光発光の機構解明をおこなうために、さまざまな光強度下で励起状態の割合の異なる複数の回折データを収集し、励起状態の構造を解明する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
A型構造の解析にはT203I変異体を、B型構造の解析にはS65TおよびE222Q変異体を使用して回折実験に使用する結晶を作製し、A型およびB型構造を持つ変異体について、高分解能(最高分解能<1.0 Å)で水素原子を含めた構造決定をおこなった。また、0.8 Åより高い分解能のX線回折データを収集したE222Q変異体については、電荷密度解析とトポロジー解析をおこない、価電子の分布や電荷などを決定することができた。また、中性子線回折実験に向けて大型結晶(<1.0 mm3)を作成し、また、パルス中性子線を使用して、予備的な中性子線回折実験をおこない、1.8 Å分解能の回折反射を測定することに成功した。装置関数の補正方法などの検討を実施して適切な回折データ処理をおこなう方法を確立した。さらには、微結晶を磁場配向させた擬似単結晶を作製してX線結晶構造解析をおこない、回折データ収集と構造解析をおこなうことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
プロトンを含む全水素原子を観察するために、中性子線解析を完成させる。蛍光発光の機構解明には光励起状態の構造情報は有用であるが、タンパク質の光励起状態の構造が解明された例はない。そこで、さまざまな光強度下で励起状態の割合の異なる複数の回折データを収集し、励起状態の構造を解明する。また、励起状態に近い構造を持つ変異体を作製して、そのX線構造解析もおこなう。
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Research Products
(4 results)