2017 Fiscal Year Annual Research Report
ULK1高次集積複合体によるオートファジー誘導シグナル感知機構の総合的理解
Project/Area Number |
17H03670
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山本 林 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 講師 (80551283)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | オートファジー / mTORC / pahse separation |
Outline of Annual Research Achievements |
オートファジー始動を制御するULK1/Atg1複合体と上流シグナルキナーゼTORC1複合体の相互作用について解析を行い、ULK1の中央部分の天然変性領域でmTORC1複合体と相互作用することを見出した。この領域は保存性が低い天然変性領域の中で局所的に保存性が高く、その重要性が示唆される。一方で、出芽酵母ではAtg1複合体の別の構成因子であるAtg13のC末端領域を介してTORC1複合体のKog1と相互作用することを見出している。このC末端領域はリン酸化を受けることでTOS-likeモチーフとなり、Kog1と相互作用することを明らかにした(投稿準備中)。これらの結果は、上流からのシグナルの受け手が進化の過程で出芽酵母Atg13から哺乳類ULK1に移行していることを示唆している。哺乳類ULK1複合体とmTORC1複合体の相互作用についてさらに解析を進めたところ、ULK1の中央部分の変異体ではオートファジー非誘導時であってもULK1のリン酸化状態がわずかに低下している様子が観察された。しかし、オートファジー活性全体への影響はほとんど見られず、ULK1複合体とmTORC1複合体の相互作用は出芽酵母と比べて複雑化していることが示唆された。ULK1のリン酸化状態やATG13のリン酸化状態に影響のある変異体を新たに取得しており、現在解析を進めている。また、解析の過程でULK1複合体自身がphase separationにより高次集積している可能性が示唆された。これはULK1複合体の機能に直接関連する重要知見であるため、新たにin vitroでの生化学解析を追加することを計画している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
mTORC1複合体との相互作用が低下するULK1の単独変異体を得たが、ULK1の脱リン酸がわずか観察されるものの、オートファジー全体への影響は小さく、当初の計画からは遅れが生じている。これはULK1複合体とmTORC1複合体の相互作用が出芽酵母でのそれよりも複雑化していることが原因と考えられる。リカバリーのため、変異体解析をULK1単独から、ATG13など他の因子にも拡大し、すでにリン酸化状態に大きな影響のある変異体を複数取得しているので、オートファジー活性の測定などを早急に進める予定である。出芽酵母Atg1複合体とTORC1複合体の相互作用については新たな知見が得られたため、現在論文準備中である。当初の計画にやや遅れがある一方で、ULK1複合体の高次集積機構については新たに重要知見を得ており、ULK1複合体自身がphase separationにより高次集積している可能性が強く示唆された。phase separationは近年非常に注目されている現象であり、オートファジー始動の分子メカニズムを明らかにする上で大きな発見と言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
ULK1欠損HeLa細胞およびATG13欠損HeLa細胞をCRISPR/Cas9法で作製してあるため、これに活性測定用プローブを発現させて、ULK1およびATG13の変異体についてオートファジー活性の測定などを行う。特にULK1高次集積体の形成状況についてin vivoでの解析を進める。これと並行して、in vitroでの高次集積体形成について解析を行う。ULK1複合体の各構成因子をHigh Five昆虫細胞で大量発現させ、in vitroでのphase separationについて観察を行い、必要に応じてULK1およびATG13の各種変異体を組み合わせる。 当初の計画に従って、オートファゴソーム膜前駆体の生化学的単離およびATG9ベシクルのリクルート機構について解析を進める(これは変異体解析とは別々に進める)。ATG9ベシクルのリクルートはULK1複合体構成因子のATG13およびATG101のHORMAドメインを介する可能性が見出されているため、これらの因子との相互作用を解析するとともにATG13-ATG101 HORMAからの質量分析を行うことで相互作用因子の網羅的解析を行う。また、細胞内におけるオートファゴソーム形成部位にはオートファジーカーゴであるp62などの蓄積が観察されているため、カーゴタンパク質のAPEX付加体を作製し、オートファゴソーム形成部位の周辺因子を特異的にビオチン化することでオートファジー初期因子の網羅的同定を行う。
|
Research Products
(4 results)