2017 Fiscal Year Annual Research Report
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17H03671
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
神吉 智丈 新潟大学, 医歯学系, 教授 (50398088)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ミトコンドリア / オートファジー / マイトファジー |
Outline of Annual Research Achievements |
マイトファジーはオートファジーによる選択的なミトコンドリア分解機構である。これまでに、出芽酵母やヒト培養細胞を用いてマイトファジーの分子機構と生理的意義の解明を行ってきたが、最近になって、マイトファジーの過程において、隔離膜がミトコンドリア上に形成され、ミトコンドリアと強固に結合しながらミトコンドリアを包み込んでいることや分解されるミトコンドリアのほとんどがミトコンドリアDNA(mtDNA)を含んでいることを見出してきた。本研究は、こうした研究を発展させ、マイトファジーの分子機構や生理的意義を理解することを目的としている。具体的には、1.mtDNAがミトコンドリア分解の指標となっているかどうかの検証、2.隔離膜とミトコンドリアを結びつけている因子の同定・機能解析、3.分裂酵母を用いたマイトファジー因子の網羅的探索・同定・機能解析、4.マイトファジーによるmtDNAの分解の生理的意義の解明、を推進する。 2017年度の研究では、まず、mtDNAがミトコンドリア分解指標となっているかに関しての検証を行った。その結果、mtDNAは効率よく分解されているものの、mtDNAが分解指標となっているという明確なデータは得られなかった。次に、隔離膜とミトコンドリアを結びつけている因子の候補を遺伝学的に探索し、いくつかの候補因子を同定した。同時に、プロテオミクスの手法を用いて、隔離膜とミトコンドリアを結び付けている因子の同定を試みたが、プロテオミクスを行うための試料生成が成功しなかった。さらに、分裂酵母を用いたマイトファジー因子の網羅的探索も実施し、マイトファジーに関連すると思われる複数の因子候補の同定に成功した。これらの候補因子の一部に関しては、本当にマイトファジーに重要な役割を持つかどうかの解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2017年度の研究では、分裂酵母の新規マイトファジー因子候補を複数同定することに成功している点、また隔離膜とミトコンドリアを結び付けている因子候補の同定にも成功している点から、研究は想定以上に順調に推移していると考えられる。一方で、マイトファゴソームの精製に時間がかかってしまい、この点は予定よりも計画が遅れている。このようなことから、研究全体の進捗状況は、おおむね順調であると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度の研究では、マイトファゴソームを単離精製するステップで遅れが生じたため、2018年度には、これまでに確立してきた方法を用いて大量に単離精製したマイトファゴソームからミトコンドリアと隔離膜を結びつけている因子の同定を行う。具体的には、単離精製したマイトファゴソームをTritonX-100などの非イオン性界面活性剤で可溶化し、隔離膜上に豊富に存在するLC3を抗LC3抗体ビーズで免疫沈降することで、隔離膜と結合しているミトコンドリア側のタンパク質を回収する方法を実施する。このときに、ホルムアルデヒドによる非特異的な架橋やアミノ基やスルフヒドリル基に結合するタンパク質架橋剤をマイトファゴソームに作用させ複合体を架橋後に免疫沈降する等、種々の条件を試みる。(コントロールとして非特異的IgGビーズによる免疫沈降を行う)。 次に、上述の方法で回収されたタンパク質をLC-MS/MSにより同定し、コントロールから同定できたタンパク質を差し引いて特異的な因子候補を得る。このようにして得られたミトコンドリアと隔離膜を結び付ける因子候補から、特にミトコンドリア外膜に局在する因子を優先して、次の実験を行う。ヒト培養細胞を用いて、候補因子をsiRNA又はCRISPR/Cas9で発現抑制し、マイトファジーをmito-Keimaによる観察法で解析することで、マイトファジーに必要な因子を決定する。さらに、決定したマイトファジー因子の機能解析を行う。具体的には、CRISPR/Cas9で作製したそれぞれの因子のノックアウト細胞で蛍光顕微鏡タイムラプス解析を行い、隔離膜がミトコンドリア上で形成し、それがミトコンドリアを包み込みマイトファゴソームとなるまでの過程を観察する。
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