2017 Fiscal Year Annual Research Report
細胞認識を起点としたSurveillanceシステムの遺伝的基盤
Project/Area Number |
17H03673
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大澤 志津江 京都大学, 生命科学研究科, 准教授 (80515065)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 創傷治癒 / Sas-PTP10D / Slit-Robo |
Outline of Annual Research Achievements |
多細胞コミュニティーにおいて排除すべき細胞を認識してその排除を実行する機構が、器官形成や恒常性維持で重要な役割を果たすと考えられているが、その生理機能や分子機構はいまだ不明な点が多い。我々はショウジョウバエ上皮をモデル系として導入し、上皮組織に生じたがん原性の極性崩壊細胞を認識する上で、リガンドー受容体システムSas-PTP10Dが重要な役割を果たしていることを明らかにしてきた(Yamamoto#, Ohsawa# (# equal contribution) et al., Nature, 2017)。また一方で我々は、極性崩壊細胞の排除を促進する上で、神経系で反発作用を誘発するリガンドー受容体システムSlit-Roboが重要な役割を果たしていることを明らかにしてきた(Vaughen & Igaki, Dev Cell, 2017)。そこで、Sas-PTP10DおよびSlit-Roboシステムに着目し、「細胞認識を起点としたSurveillanceシステム」が機能する組織・時期を探索した。その過程で、翅成虫原基(将来、翅のブレード領域を形成する幼虫期の組織)に対してタングステンニードルにより導入された物理的損傷が修復する過程において、Sas-PTP10DおよびSlit-Roboシステムがいずれも重要な役割を果たしていることが分かった。興味深いことに、Slit-Roboシステムを遺伝学的に破綻させると、創傷治癒の間で生じた死細胞が組織から排除されずに成虫原基に留まる様子が観察された。この観察結果は、死細胞の組織からの排除が創傷治癒を行う上で重要な役割を果たしていることを示唆している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、上皮組織に生じたがん原性細胞を認識・排除する上で重要な役割を果たすSas-PTP10DおよびSlit-Roboシステムが創傷治癒の過程においても機能していることが分かった。さらに、Slit-Roboシステムによる死細胞の組織からの排除が創傷治癒を行う上で重要な役割を果たしていることが分かった。これらの結果は、創傷治癒の過程において、排除すべき細胞を認識・排除するシステムが機能するという新しい概念を示唆するものである。
|
Strategy for Future Research Activity |
Slit-Roboシステムによる死細胞排除のメカニズムを遺伝学的に解析するとともに、死にゆく細胞の特質とその周辺細胞の細胞ダイナミクスを解析する。また、それと並行して、Sas-PTP10Dシステムが創傷治癒において果たす役割とその分子機構を解析する。
|
Research Products
(10 results)