2018 Fiscal Year Annual Research Report
リン酸化修飾によるミトコンドリア機能と品質管理の制御機構
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17H03676
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
岡 敏彦 立教大学, 理学部, 教授 (40263321)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ミトコンドリア |
Outline of Annual Research Achievements |
ミトコンドリアは様々な細胞機能に重要な役割を果たしているため,その活性は細胞により調節されている。特に,オートファジーを介した障害を受けたミトコンドリアの排斥は,ミトコンドリア品質管理として,近年,その詳細な分子メカニズムが明らかになってきた。私達は,PINK1とParkinにより制御されるミトコンドリアの品質管理が,cAMP/PKA経路を介したMIC60/MIC19のリン酸化修飾により調節されていることを明らかにした。しかし,ミトコンドリアでのリン酸化による調節機構には,まだ不明な点が多く残されている。本研究では,MIC60/MIC19, そしてDNAJC11のリン酸化修飾に着目して,そのリン酸化を介したミトコンドリア機能の調節機構の分子メカニズムを明らかにする事を目指している。 平成30年度は,次の3点について研究を進めた。 1.MIC60相互作用因子SLC25A46の発現抑制で,Parkinのミトコンドリア標的化に阻害効果が観察されたため,異なるsiRNAを用いてその効果を検討したが,2次的な影響であると推察された。 2.MIC60/MIC19のPKAによるリン酸化反応が細胞質またはミトコンドリアのどちらで起こるかは,調節機構を理解する上で重要なポイントとなる。そこで,新規合成後に翻訳後修飾によりリン酸化されたMIC60がミトコンドリアへの輸送出来るかを検討するため,ウサギ網状赤血球抽出液を用いた無細胞系で合成したMIC60を,細胞抽出液中に内在するPKAにより合成と同時に修飾する方法を確立した。 3.PKAによる直接的なDNAJC11のリン酸化は,これまで確認できていないが,DNAJC11はMIC60/MIC19とMIBと呼ばれるタンパク質超複合体を形成することから,ミトコンドリア品質管理に寄与することが推定される。 そこで,DNAJC11の機能ドメインを欠損変異体を用いて解析したところ,C末端にミトコンドリア局在化に必須な4アミノ酸残基から成る配列を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.MIC60相互作用因子SLC25A46の発現抑制で,Parkinのミトコンドリア標的化に影響が観察されたが,その効果は弱く,二次的な影響と推察された。そこで,同じ外膜タンパク質のPINK1の安定性を介してSLC25A46がParkin標的化に影響している可能性を検討している。 2.大きな負の電荷を持つリン酸基を付加された新生タンパク質が,ミトコンドリアの膜透過装置を通過できるかは不明である。そこで,ウサギ網状赤血球抽出液を用いた無細胞系でMIC60を合成と同時にPKAによるリン酸化修飾を行い,ミトコンドリア輸送系のモニタリング基質を作成した。 3.DNAJC11のPKAを介したリン酸化反応は未同定であるが,ミトコンドリア局在化に必須なアミノ酸配列を,そのC末端領域に見出した。この部分は,神経筋疾患モデルのspc変異マウスにおいて欠損している領域に位置していた。
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Strategy for Future Research Activity |
1)MIC60/MIC19のリン酸化による品質管理の調節を解析するため, MIC60相互作用因子SLC25A46を発現抑制したがParkin標的化への影響は小さく間接的な効果であると考えられたため,次にPINK1の分解への役割を解析する。SLC25A46の野生型と変異体の安定発現細胞を樹立したので,ヒトで見つかったSLC25A46変異の影響についても検討する。 2)PKAによりリン酸化されたミトコンドリアタンパク質のミトコンドリア内への輸送機構を解明するため,無細胞系で合成したリン酸化MIC60の輸送活性をin vitroミトコンドリア輸送系を用いて検討し,様々な輸送因子の要求性を明らかにする。 3)ミトコンドリアタンパク質DNAJC11の生理的役割を明らかにするため,ミトコンドリアでの膜配向性と輸送に必須なシス領域を決定する。
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