2017 Fiscal Year Annual Research Report
Investigation of molecular mechanism governing open chromatin formation in mouse ES cells
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17H03687
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
丹羽 仁史 熊本大学, 発生医学研究所, 教授 (80253730)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 幹細胞 / 多能性 / エピジェネティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、マウスES細胞において開いたクロマチンの状態を規定する分子機構を解明することを、その目標とする。具体的には、我々が同定した候補因子Myst2について、詳細な機能解析を進める。そして、Myst2の機能が、ヒストンアセチル化によるものなのか、あるいは他の分子のアセチル化を介したものなのかを、明らかにするとともに、これらのアセチル化がどのように多能性維持に関与するのかを解明する。 平成29年度は、まず、Myst2欠損を誘導したES細胞ならびに恒常的にMyst2を欠損したES細胞の遺伝子発現パターンをRNA-seq法で解析し、Prdm14などの多能性関連転写因子とともに、いわゆる2細胞期マーカー遺伝子の発現が変動することを見出した。また、ウエスタンブロット法によるヒストン修飾の解析から、Myst2欠損によりH3K9などのアセチル化が減少することを確認した。さらに、Myst2欠損ES細胞の血清中での増殖能低下を相補する多能性関連転写因子の同定を試みたが、これまでにそのような能力を持つ転写因子は見いだせていない。 一方で、機能的Ty1タグ付きMyst2遺伝子を作成し、これでMyst2欠損ES細胞を機能相補した細胞株を樹立した。この細胞を用いて、抗Ty1抗体を用いたクロマチン産物の免疫沈降を行い、これを次世代シークエンサーで解析することにより、ゲノム上のMyst2結合領域を同定した。 Myst2欠損ES細胞の培養条件依存性について、詳細な検討を試みた。この結果、MAPキナーゼ経路を遮断するERK阻害剤を添加すると、血清含有培地におけるMyst2欠損ES細胞の増殖能が回復した。この知見は、Myst2の機能をシグナル伝達と結びつけるものとして、極めて興味深い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時に計画した5項目それぞれについて、順調に研究は進展している。特に、Myst2の機能をMAPキナーゼシグナルと結びつける知見が得られたことは、今後の研究推進に一つの指針を与えるものである。一方で、Myst2欠損がES細胞のクロマチン状態に与える影響については、その測定方法の検討に留まっている。DNaseI hypersensitivity法はスループットが悪いため、現在FRAP (fluorescence recovery after photobleaching)法による測定を検討している。この目的のために、H2B-GFP, HP1a-GFP, HP1b-GFP, HP1g-GFPを導入したES細胞を作成し、条件検討を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでの進展に基づき、計画に沿って研究を進めていく。平成30年度は、まず、昨年度作成したTy1-Myst2 でレスキューされたES 細胞を用いた免疫沈降-LC-MS/MS 解析により、Myst2 複合体の解析を行う。そして、同定された結合因子のIP によるMyst2 結合の検証を行う。 また、Myst2 と機能重複する可能性のある遺伝子の解析を行う。マウスES 細胞においては、3つのMyst family メンバー(Myst1, Myst4, Tip60)が高発現している。これまでの報告では、Myst2 を含むこれら4つのMyst family メンバーは、少しずつ重複しながらも異なる特異性を示し、ヒストンH3,H4 の異なるリジン残基のアセチル化を行っているとされている。しかし、これらの間の機能重複が、Myst2 欠損ES 細胞が血清含有培地で増殖能を低下させながらも自己複製を継続する際に、機能代償的に作用している可能性がある。そこで、誘導型Myst2 欠損ES 細胞において、Crispr/Cas9 法 を用いてこれらのメンバーの遺伝子破壊を行い、これが血清含有培地におけるMyst2 欠損誘導時に見られる、一部の細胞の自己複継続に与える影響を解析する。 さらに、Myst2 欠損ES 細胞で代償的に発現上昇を示すエピジェネティック制御因子の同定と、その機能の検証を行う。昨年度得られた遺伝子発現解析データから、血清含有培地で樹立された恒常的Myst2 欠損ES 細胞で発現量が変化する遺伝子から、エピジェネティック制御因子をコードするものを抽出する。これらについて、強制発現ないしはshRNA-mediated knock-down 法により、その発現量を正常化した時の自己複製への影響を検討する。
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