2018 Fiscal Year Annual Research Report
ペプチドホルモン経路と低分子ホルモン経路の干渉を介した発生・成長システムの解明
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17H03695
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
打田 直行 名古屋大学, トランスフォーマティブ生命分子研究所, 特任准教授 (40467692)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ペプチドホルモン / 低分子ホルモン / 受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
高等植物の体は様々な細胞群が協調して機能することで成り立つが、それら細胞間のコミュニケーションを秩序立てて処理する仕組みや、その仕組みが発生・成長の制御において担う役割に関して、過去に解明された例は未だ限定的である。そのような中、研究代表者は、共通の受容体ファミリーが複数の現象で共通して働くものの、現象ごとに異なるリガンドを受容し、さらにその受容体経路の下流では現象ごとに異なる低分子ホルモン経路の働きが調節される、という興味深い受容体システムに関する研究を展開してきた。本研究ではこの研究経緯を発展させ、リガンドの選択性を現象ごとに変化させる分子機序、異なる低分子ホルモン経路の働きが現象ごとに調節されるメカニズム、に焦点を当てた解析を行い、これらの仕組みで中心的な役割を担う新規制御因子群の同定までを目指す。 本年度は、本研究で解析対象とするERファミリー受容体群の関わる発生現象のうち、リガンドが同定されていないケースでの未同定リガンドの同定作業のうち、昨年度までに葉脈パターン形成でのリガンド候補として発達中の葉脈で生まれるリンド候補を見出していたので、その解析に用いる植物の作成などを進めた。まず既存の変異体が存在していなかったので、CRISPR/Cas9により機能失変異体の作成を進め、複数の機能欠失アレルをホモの状態で確立した。また、エシトラジオール誘導型の過剰発現体も確立も完了した。他にも、扱っている各種のリガンドに関して、機能冗長性を考慮した機能欠失多重変異体の作製も進めた。これらのラインは今後解析を進める。さらに、着目している各現象ごとにERファミリー経路の下流で調節される低分子ホルモン経路の探索を進めた結果、花器官の成長に関わるペプチドホルモンの下流で低分子植物ホルモンのジベレシン経路が調節されている可能性を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
解析に必要となる機能欠失体や過剰発現体のライン整備が順調に進んでいることにくわえて、受容体シグナルの下流で低分子ホルモンの作用が変化している可能性もつかんだ。以上のことから、現在までの進捗状況としては、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
着目している因子群に関してまずは確立が進んできた過剰発現体と機能欠失体の解析を進める。機能欠失体に分かりやすい異常が生じていない場合は、機能冗長性により機能が補完されている可能性を考慮し、ファミリー因子群との多重機能欠損体を作製する。花器官の成長に関わるペプチドホルモンの下流で低分子植物ホルモンのジベレシン経路が調節されている可能性を見出したのと同様に、他の着目現象においても今回の受容体下流でどのような低分子ホルモン経路が作動しているのかの解析を引き続き進める。また、本受容体下流でこれら低分子ホルモン経路がどのような機序で活性調節をされているのかの解析を進める予定である。
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Research Products
(7 results)