2017 Fiscal Year Annual Research Report
Molecular mechanisms of cell cycle regulation supporting plasticity in plant growth
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17H03696
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
伊藤 正樹 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (10242851)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
町田 泰則 名古屋大学, 理学研究科, 研究員 (80175596)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 細胞周期 / 非対称分裂 / 転写制御 / 細胞サイズ / 細胞分裂 / シロイヌナズナ / 植物 |
Outline of Annual Research Achievements |
MYB3Rが形成する複合体について、海外との共同研究を行い、新たに2種類の構成因子をプロテオミクスの手法により同定した。これら新奇因子やこれまでに同定していたTCXおよびMSIファミリータンパク質について、GFP融合発現株や多重変異体の獲得、作出を進め、ほぼ完了させることができた。また、これらを用いて、予備的な表現型解析のほか、トランスクリプトーム解析、ChIP-seqの準備を行った。 APC/Cユビキチンリガーゼの抑制因子GIG1を欠く変異体では、非対称分裂における細胞運命決定に特徴的な異常が生じる。これまでに核内mRNA代謝との関連が示唆されていたため、mRNA代謝関連因子の欠失変異体を選抜して調べたところ、高頻度でgig1表現型を促進することがわかった。また、反対にgig1を抑圧する変異upf3も同定された。促進変異体azr1/2で発現上昇していたANAC転写因子をgig1背景で誘導的に過剰発現させると、植物体の成長が強く抑制された。この結果から、核内mRNA代謝異常がANAC発現とAPC/C活性制御を介して細胞周期を抑制する新しいチェックポイントの存在が想起された。 細胞サイズを制御する転写因子E1Mについて、変異体の詳細な表現型解析を行い、花茎など特定の組織において細胞サイズが顕著に減少していることを示した。GFP融合発現株においてE1Mの細胞内局在を調べたところ、核のほかにプラスチドに局在することが示唆された。E1MのN末端領域を欠失させるとプラスチド局在がなくなり、核にのみ発現するようになること、この欠失型E1Mは全長E1Mに比べて核での発現が強くなることから、E1MにはN末端にトランジットペプチドが存在し、プラスチドと核に分配されることで、プラスチドの量に依存した核内発現量の調節を受けていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
G2/M期における転写制御に中心的な働きをもつMYB3R転写因子はDREAM complexと呼ばれる大きなタンパク質複合体を形成することが示唆されていた。これについて、海外との共同研究を推進し、生化学的な手法とプロテオミクスを組み合わせることによりMYB3Rタンパク質複合体の新たな構成因子を2種類同定することができた。これまでは、量的な制約により生化学的な同定が困難であったが、本年度はこのような技術的な問題をクリアすることができた。新たに同定した構成因子に加え、これまでに同定していた複数の構成因子について、GFP融合発現株を作成したり、遺伝子ファミリーを形成しているものについては多重変異体の獲得を進め、表現型解析など種々の解析のための準備を整えることができた。 GIG1による細胞運命決定に関する研究では、核内mRNA代謝に関連した様々な機能をもつ因子(pre-mRNAスプライシング、5’キャッピング、ポリA付加、mRNA成熟、mRNA核外輸送、ナンセンス変異依存mRNA分解など)がgig1変異を高頻度で促進したことから、GIG1による細胞運命決定や細胞周期制御には核内mRNA代謝が密接に関連していることが改めて強く示唆され、今後の研究に確固とした方向性を与えることができた。 細胞サイズ制御に関わる転写因子E1Mについては、核とプラスチドの両方に局在することが明らかになり、プラスチドと細胞周期制御との新たな関連について興味深い示唆を与えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
MYB3R転写因子が構成するタンパク質複合体に関しては、新たに同定した2種類の構成因子のほか、これらまで解析を進めていた構成因子について、多重変異体の作出を進める一方、E2Fファミリー転写因子などを含め作出の終了した多重変異体の表現型解析や遺伝子発現解析を本格的に開始する。また、構成因子間の相互作用についても解析するため、交配によりさらに高次の多重変異体の作出を行う。また、GFP融合発現株が得られたものについては、順次、クロマチン免疫沈降解析による網羅的な標的遺伝子の探索(ChIP-seq解析)を行う予定である。 非対称分裂におけるGIG1の機能に関する研究では、促進および抑圧変異の解析を進め、これらがgig1表現型に影響する仕組みの解明を目指した研究を行う。例えば、促進変異体で上方制御されるANAC転写因子の機能解析やRNA代謝関連因子の変異により発現に影響を受ける遺伝子の同定をRNAseqなどにより行う。 細胞サイズ制御に関わるE1M転写因子については、プラスチドに局在することが示唆されたため、この局在の生理的な意義を明らかにすることを目指した研究を行う。例えばプラスチドに局在しなくなるように操作したE1Mの機能を解析したり、プラスチドへのタンパク質輸送に欠失を持つ変異体におけるE1Mの局在や細胞サイズに関する表現型の解析などを行う予定である。また、E1Mのプラスチド局在は、細胞分裂とプラスチド増幅を協調させる仕組みに関連がある可能性があるため、プラスチド維持に欠失を持つ変異体におけるE1Mの働きを調べる実験を計画している。
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