2017 Fiscal Year Annual Research Report
レドックスシグナル伝達において活性カルボニル種はどのように特異的作用をもたらすか
Project/Area Number |
17H03700
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
真野 純一 山口大学, 大学研究推進機構, 教授 (50243100)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村田 芳行 岡山大学, 環境生命科学研究科, 教授 (70263621)
北島 佐紀人 京都工芸繊維大学, 応用生物学系, 准教授 (70283653)
松井 健二 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (90199729)
山内 靖雄 神戸大学, 農学研究科, 助教 (90283978)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 活性カルボニル種 / 活性酸素 / 酸化シグナル / グルタチオントランスフェラーゼ / 過酸化脂質 |
Outline of Annual Research Achievements |
活性酸素が植物細胞でシグナルとしてはたらくとき,過酸化脂質から生じる活性カルボニル種(RCS)が標的タンパク質を修飾してシグナルを伝達すると考えられる。本研究の目的は,植物の環境ストレス応答やホルモン応答において,それぞれの刺激や標的細胞に対応した特異的なRCSが生成することで,もとの情報が保持されるという作業仮設の検証である。実験対象は,(1) タバコBY-2培養細胞での過酸化水素によるプログラム細胞死(PCD),(2) シロイヌナズナの熱ショック応答によるストレス防御遺伝子群発現,(3) 孔辺細胞のアブシシン酸応答,(4) シロイヌナズナのオーキシン応答による側根形成の4つの生理現象におけるRCSの作用の解明,および(5)シロイヌナズナにおいて活性カルボニル種を消去するグルタチオントランスフェラーゼ(GST)の探索である。 平成29年度の成果:(1)PCDを引き起こす濃度の過酸化水素をBY-2細胞に与えると,RCSのなかでもとくに4-ヒドロキシノネナール(HNE)が最初に増大すること,この増大の原因はHNE消去酵素の失活であることを発見した。(2) 熱ショック応答でのRCSの標的タンパク質と予測していたHsfA1を欠損した変異株でも野生株と同様のRCS応答が見られたことから予測が反証された。(3) シロイヌナズナにオーキシンを与え側根を形成させるとき,側根形成に先立ち,根のRCS含量が増大した。またRCS消去剤はオーキシンによる側根形成を阻害した。さらにRCS添加により側根形成が促進された。これらの結果から,RCSは側根形成のオーキシンシグナルを強めることを明らかにした。(4)シロイヌナズナにはRCS去活性をもつGSTアイソザイムが10種あることを見いだした。(5) シロイヌナズナ葉の恒常的RCS生成にはリポキシゲナーゼが関与するという遺伝学的証拠を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1) アクロレインを特異的に消去するGSTアイソザイムを新たにシロイヌナズナから9種,ハクサイから2種発見した。また4-ヒドロキシノネナールを消去するGSTアイソザイムも新たに2種発見した。これにより,植物のRCS消去にはGSTが重要な役割を持つことが明らかになった。 2) RCS生成機構について,リポキシゲナーゼの関与を示唆する新たな結果を得た。これはRCS生成制御の新たなメカニズムの発見につながる重要な進展である。 3) オーキシンによる側根形成開始が,RCSが関わるホルモン応答であることを新たに見いだした。また,オーキシンシグナル伝達変異株などの解析から,RCSの作用部位はAux/IAAレプレッサーの分解より上流であり,おそらくTIR1タンパク質であると推定できた。これをもとに,RCSのオーキシンシグナル調節機構の解明の進展が期待できる。 4) 高温ストレス応答におけるRCSの標的分子は当初の予測と異なっていたため,RCS標的分子を網羅的に解析し,そこから高温ストレス応答に関与する因子を絞り込むという戦略に修正する。実験条件を最適化する必要があり,計画よりも時間がかかる。 5) アブシシン酸の気孔閉口シグナル伝達におけるRCSの標的タンパク質同定に必要な孔辺細胞試料の量を見積もる予備実験の結果が出たため,必要量の孔辺細胞試料が調製でき次第,結果が出せる。 6) 過酸化水素によりHNE還元酵素が失活することから,この酵素が活性酸素のセンサーとしてRCSレベルを制御する一つのスイッチとして働く可能性が示唆された。この酵素を単離・同定し,過酸化水素による失活機構を解明すれば,酸化シグナルの新たな制御機構の発見となる。
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Strategy for Future Research Activity |
1) GSTによるアクロレイン消去の生理学的重要性を検証する。とくに恒常的発現レベルが高いアイソザイムTau19は恒常的なアクロレイン消去に重要と考えられるため,まずTau19の存在意義を評価する。Tau19遺伝子を過剰発現する組換えシロイヌナズナを作成する。また,遺伝子欠損株を取得する。これらの変異株を用い環境ストレス耐性を評価する。 2) 側根形成のオーキシンシグナルをRCSが高めるしくみを解明するため,RCSを感知するタンパク質を抗体アフィニティ精製とプロテオーム解析により同定する。 3) 熱ショック応答におけるRCS感知タンパク質を同定するため,熱ショックを与えたときにRCS修飾レベルが高まるタンパク質を,抗体アフィニティ精製と差分プロテオーム解析により同定する。ここから,シグナル伝達に関与する候補因子を選び,その遺伝子欠損株と野生株で熱ショック応答およびRCS応答遺伝子発現を比較する。 4) 気孔閉口のアブシシン酸シグナルに関与するRCS感知タンパク質を,抗体アフィニティ精製とプロテオーム解析により同定する。 5) 過酸化水素によるPCD開始の初期応答として失活するHNE消去酵素の性質を解明するため,当該酵素を精製・同定する。また,遺伝子を特定し,アミノ酸配列を得る。精製酵素の活性が過酸化水素処理によって調節される詳細なしくみを,TOF-MS解析にもとづく被酸化アミノ酸の特定から明らかにする。 6) リポキシゲナーゼ(LOX)が関与するRCS生成機構を解明するため,LOXが局在する葉緑体,および葉緑体の各コンパートメントのRCS組成を詳細に解析する。また,LOXがストレス条件下でのRCS生成に関与するか,LOX遺伝子欠損株のRCS組成を解析し,明らかにする。
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Research Products
(12 results)
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[Presentation] Identification of six carbon-aldehde reductase responsible for the adjustment of green leaf volatile composition in Arabidopsis thaliana.2018
Author(s)
Tanaka, T., Ikeda, A., Shiki, K., Kunihiro, N. N., Yamato, K. T., Dohra, H., Ohnishi, T., Koeduka, T., Matsui, K.
Organizer
Plant Volatiles Gordon Research Coference
Int'l Joint Research
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