2017 Fiscal Year Annual Research Report
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17H03704
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
杉本 慶子 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, チームリーダー (30455349)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 器官再生 / 植物ホルモン / 脱分化 / 再分化 / シロイヌナズナ |
Outline of Annual Research Achievements |
植物の再生はオーキシンやサイトカイニンによって著しく促進されるが、そのメカニズムは断片的にしか理解されていない。本研究では、網羅的な転写制御ネットワークを構築し、この分子機構の全貌解明を進めることを目指す。また私たちはヒストンバリアントが外植片を用いた組織培養系で茎葉再生を制御することを見出しており、本研究では転写制御に加えてクロマチンレベルの制御が器官再生において果たす役割も明らかにする。さらに、高度に分化した細胞が脱分化を介して個体再生を行う系としてプロトプラストの実験系を導入し、そこでの転写制御因子やヒストンバリアントの機能を解明する。これらの解析を通して、脱分化から再分化に至るまでの植物細胞の分化転換を制御する分子機構を包括的に理解する。先行研究から再生を司る鍵遺伝子の発現が並行して働く複数のシグナル経路によって制御されることが見えてきている。今年度は既報のマイクロアレイデータを用いてこれらの遺伝子がカルス誘導培地 (callus inducing media, CIM) 及び茎葉誘導培地 (shoot inducing media, SIM) 上でのカルス形成、茎葉再生過程においてどのタイミングで発現するかを確認した。次にこれらの転写関係をシロイヌナズナの培養細胞を用いたレポーターアッセイによって検証した。また注目する転写因子が外植片からの再生誘導時に下流遺伝子のプロモーターに実際に結合するかどうかをクロマチン免疫沈降法(Chromatin Immunoprecipitation, ChIP) PCRによって調べた。またヒストンバリアントの変異体を用いたRNAseq解析を行い、下流標的遺伝子の候補探索を開始した。さらにシロイヌナズナの葉肉プロトプラストからカルスを形成し、個体再生を誘導する実験系の確立を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
転写制御ネットワークの構築を着実に進めることが出来ただけでなく、ヒストンバリアントの機能解明に向けたRNAseq解析も順調に立ち上げることができた。実際に変異体の表現型から予測している下流標的遺伝子のいくつかが発現変動することを確認しており、同様のタイムポイントで発現変動する他の遺伝子についても今後解析を進める準備を整えることができた。プロトプラストからの再生系の構築についても光、温度、培地条件等の検討を終え、再現性よくカルス化を定量することが可能になった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究から直接的な発現制御関係が確認される転写因子-プロモーター関係をさらに分子遺伝学的に検証する。ヒストンバリアントの標的と予想される遺伝子についてはレポーターラインを構築し、カルス形成時、茎葉再生時に発現のタイミングやパターンにどういった異常がみられるかを調べる。これらの解析から同定されるリプログラミング制御因子の変異体ついてプロトプラストからの再生実験を行い、表現型を検証する。
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