2017 Fiscal Year Annual Research Report
Origin and evolution of a sex determination region in the chromosome: the lineage of primitive marine multicellular-algae, the family Ulvaceae
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17H03705
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
河野 重行 東京大学, フューチャーセンター推進機構, 特任研究員 (70161338)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮村 新一 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (00192766)
桑野 和可 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 教授 (60301363)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アオノリ / Ulva partita / ゲノム / 交配型 / 性決定領域 / 雌雄性 / 非対称性 / 同形配偶子接合 |
Outline of Annual Research Achievements |
雌雄が異なっているのは、動物においてはほとんど当たり前であるし、その配偶子に至っては卵と精子で大きさに極端な相違がある。興味深いのは藻類で、同形から異形、異形から卵生殖へといった進化の中間体が複数の系統で生存している。アオサ藻綱に属するアオノリは雌雄配偶子が同形から異形へとわずかに進化した種である。研究にはUlva prolifera(スジアオノリ)やUlva partitaを用いた(後者は、学名変更とともに、和名も小種名にならってヒラアオノリからショウジョウアオノリに変えた)。大きさという変動しやすい量的形質から、左右の非対称性という空間的で一義的な形質に目を転ずると、眼点と接合装置の位置が雌雄で逆転していて、雌雄の個体サイズの差が生じる前から雌雄に左右の非対称性があることがわかってきている。交配型あるいは性とはこの非対称性のことなのだろうか? 細胞構造の非対称性に加えゲノム解析で明らかになった交配型(MT)領域を手がかりに原始的な多細胞海産藻類であるアオサ・アオノリの系統を探り、この系統における性決定領域の起源と進化を明らかにする。 当該年度の主な研究実施計画は、1)ヒラアオノリMT領域の詳細マップと大規模EST構築と、2)スジアオノリ雌雄ゲノムの完全解読とMT領域の決定にあるとした。前者には(1)ヒラアオノリMT領域内遺伝子の同定、(2)配偶子発生過程における網羅的RNAseq、(3)MT領域の雌雄に特異的な遺伝子に対する抗体作製、(4)ゲノム編集といった課題が含まれている。課題の遂行にあたっては、本年度は当初想定した以上の成果が上がられ学会発表や論文発表もできた。一方、性決定領域の起源と進化を明らかにするためには、後者のスジアオノリ雌雄ゲノムの完全解読とMT領域の決定が必要で、これによってアオノリの性決定領域のゲノム進化を明らかにすることができると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アオサ藻綱で全ゲノム解読された種はなかった。ショウジョウアオノリの雌雄両方のゲノムシークエンスを子細に比較し、雌雄で構造が異なる性特異的な領域を発見した。雄が1.2Mbp、雌が1.5Mbpで、雌雄で相同な遺伝子23個を含む各々47個と65個の遺伝子が存在した。分子進化解析から当該領域はアオサ目の共通祖先で既に成立していたことが示された。雄の性特異的な遺伝子UpaRWP1には、緑藻綱クラミドモナスの雄性決定遺伝子MIDとの相同性が認められたが、単系統性は支持されなかった。ただ、U. proliferaでも同様の領域にUpaRWP1が存在することがわかった。性特異的な領域はアオノリの性決定に保存的に機能しているが、アオサ藻綱と緑藻綱の性染色体の起源は異なるらしい。 雌雄特異的領域内にあって、性決定と性分化に関わる遺伝子を探索するために、配偶子誘導開始後、0、24、48時間目の雌雄の葉状体と配偶子のRNA-Seqを実施した。注目したのはUpaRWP1で、MIDと同じように窒素飢餓に応答するRWP-RKドメインをもっていて、配偶子誘導開始前の葉状体や配偶子で発現していた。CKK-CNB1 は、雄特異的なRWP1とは異なり雌雄共通の遺伝子だが、第2イントロンに逆向きに転写される領域があり、3’側の一部が第2エキソンと重複していた。CKK-CNB1の発現は雌雄どちらも配偶体と配偶子で一定であったが、逆鎖の遺伝子は配偶子形成過程で発現が上昇していた。 アオサ藻綱は単相と複相ともに単為生殖できる。配偶子を単為生殖させ、それを一過的に形質転換することで、GFPで巨大ミトコンドリアの有無とその動態を観察できた。ポリエチレングリコール法を用いた遺伝子導入率は9.0%から15.1%で、この方法の形質転換率の良さを利用して、幾つかの藻類でゲノム編集を試みたところ極めた良好な結果を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
ショウジョウアオノリを用いたゲノム解析でアオノリの性決定領域を決定した。この領域は組換え抑制のため進化速度が極めて速くなっていて、クラミドモナスやボルボックスの系とは異なる遺伝子群から構成されていた。唯一共通する遺伝子としてMIDがあり、オルガネラの母性遺伝との関係が浮上したが、両者は進化的には異なる起源であろうと推定された。近縁のスジアオノリとの比較により、多細胞性植物における雌雄性の決定に関わる遺伝子や雌雄の非対称性を生み出す分子機構が明らかになるのではないかと期待している。 そこで、1)スジアオノリ雌雄ゲノムの完全解読とMT領域の解明、2)ガメトログを用いたアオサ・アオノリ系統の雌雄性の起源の探索を優先して進めたい。HiSeq/MiSeqとPacBioシーケンスの結果、スジアオノリのゲノムサイズは雌雄ともに70Mb程度でショウジョウアオノリの60%程度でしかない。これが何を意味するかは今のところ不明だが、ショウジョウアオノリをリファレンスとしてゲノムが縮退している理由を探りたい。 ガメトログを調べることで、アオサ属が分岐したときには、相同組換えが抑制された性染色体領域が存在したことがわかっているので、個々のガメトログの塩基置換速度を測定することで性決定領域内の進化的構造を知ることができると考えている。これによって非組換え領域が出現する分子メカニズムを知る手がかりになるだろう。 他に、3)MT領域内の雌雄特異的遺伝子と雌雄の接合装置に特異的な抗体と構造の探索と4)性決定領域の解析にゲノム編集による遺伝子破壊技術の導入を検討したい。ヘマトコッカス藻を用いたモデル実験で、藻類でもゲノム編集による遺伝子破壊が容易なことを確かめてある。
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Research Products
(20 results)
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[Presentation] Endopolyploidy, fragmentation and reconstitution of chromosomes by the heavy-ion beam irradiation in Parachlorella kessleri2017
Author(s)
S.Kawano, M.Asano, K.Ishii, Y.Kazama, T.Abe, T.Takeshita, S.Ota, T.Yamazaki, K.Bisova, V.Zachleder
Organizer
BioTech 2017 and 7th Czech-Swiss Symposium with Exhibition
Int'l Joint Research / Invited
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