2017 Fiscal Year Annual Research Report
Analysis of photoperiodic mechanisms involving circadian clock and neurosecretory cells in insects
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17H03708
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
志賀 向子 大阪大学, 理学研究科, 教授 (90254383)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小滝 豊美 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, 主席研究員 (20391550)
後藤 慎介 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (70347483)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | チャバネアオカメムシ / ルリキンバエ / ACE / cycle / PDF |
Outline of Annual Research Achievements |
チャバネアオカメムシ: 1)抗Plast-MIP1抗体を用いて脳とアラタ体を含む後脳神経複合体の免疫組織化学染色をパラフィン切片で行った結果、脳間部、前大脳、視葉基部、食道下神経節に陽性細胞が存在し、比較的強く染まる細胞が頭部神経節内に約50個存在した。また、Fourier transform mass spectrometry (FT-MS)解析により、前大脳背側測方部からはPlast-MIP1-9に相当する分子イオンピークが、脳間部および側心体・アラタ体からはPlast-MIP1-5、7-9に相当するピークが検出された。2)RNA干渉法により、plast-mipのノックダウンを行った結果、短日条件において弱い休眠率の低下が見られたが、幼若ホルモンの合成活性には顕著な効果は見られなかった。一方、時計遺伝子cycleのノックダウンを行うと長日条件における休眠率の上昇と幼若ホルモン合成活性が低下する傾向が見られた。3)pdfr (pdf受容体)のノックダウンを行ったところ、短日から長日への切り替えによって起こる産卵までの期間が長くなった。4)パッチクランプ法により、脳間部大型細胞の電気活動を長日と短日条件で比較した結果、自発発火が見られた個体の割合、自発発火のスパイク頻度、静止膜電位はいずれも短日条件の方が長日条件よりも有意に高かった。また、記録後に細胞へ色素を注入した結果、染色に成功した細胞すべてにおいて、アラタ体・側心体へ投射するNCC1が染色された。
ルリキンバエ: 5)angiotensin-converting enzyme(ACE)に対する抗体を用い、免疫組織化学染色を行ったところ、食道下神経節の背側領域に1対の大型の細胞が染色された。6)ACE免疫陽性細胞を外科的に除去し卵巣発達を調節する光周性に対する影響を調べた結果、有意な効果は見られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ルリキンバエでは、ACE抗体による染色が通常よりも早く進んだため、次年度に計画していたACE細胞の除去実験も終了させることができた。 チャバネアオカメムシにおいて、電気生理記録を新たに開始した。初年度は記録方法の確立のみを計画していたが、方法の確立も順調に進み、細胞の活動を短日と長日条件で比較する実験も終了させることができた。さらに、ノックダウン実験により、PDFシグナリングの光周性における関与を示唆することができたため、電気生理実験の発展型としてPDFの薬理実験を新たに組み込む計画を立てる事ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
チャバネアオカメムシ 1)Plast-MIP免疫陽性細胞のうち、アラタ体あるいはその周辺へ投射する細胞を突き止めるため、アラタ体・側心体からのバックフィルとPlast-MIP免疫組織化学との二重染色を行う。2)現在実施している放射化学アッセイ法では幼若ホルモン合成活性の測定値のばらつきが大きく、このためにノックダウンの効果が正しく評価できていない可能性がある。そこで、幼若ホルモン測定をUPLC-MS法に切り替えることを検討する。次年度は、この方法を用いて無処理個体の幼若ホルモン量を測定する。3)本種のpdfrノックダウンの光周性に対する影響と、ハエやカメムシにおいてPDF細胞は概日時計細胞自身あるいはその近辺に存在することを考慮すると、PDFシグナルが日長切り替えの情報処理に関与する可能性が考えられる。そこで、短日から長日、長日から短日の二種類の日長切り替え実験を行い、両条件においてpdfrノックダウンの影響が見られるか検討する。4)脳間部大型細胞にPlast-MIP陽性細胞が含まれる可能性が高い。Plast-MIP`を持つ脳間部大型細胞が短日条件で幼若ホルモン合成を抑制するPlast-MIPを分泌すると仮定すると、脳間部大型細胞はPDFシグナルの下流に位置する可能性がある。そこで、脳間部大型細胞の電気活動に対するPDFペプチド投与の影響を調べる。また、脳間部大型細胞にpdfrが発現しているか調べる。
ルリキンバエ 5)ACE陽性細胞は頭部神経節内に1対しか観察されなかった。mRNAの発現量を考えると、より多くの細胞がaceを発現している可能性がある。そこで、ace発現細胞をin situ hybridization法を用いて調べる。6)バックフィルと免疫組織化学の二重染色により、休眠誘導に必要な脳側方部ニューロンの中で、概日時計遺伝子periodを発現している細胞を突き止める。
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Research Products
(4 results)