2018 Fiscal Year Annual Research Report
Regulation of heterochromatin formation and chromosome segregation by centromeric noncoding RNAs
Project/Area Number |
17H03712
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
谷 時雄 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 教授 (80197516)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | ノンコーディングRNA / セントロメア / ヘテロクロマチン形成 / 染色体動態 / 分裂酵母 / YB-1 |
Outline of Annual Research Achievements |
染色体の分離は紡錘糸の動原体への結合によって行われるが、その際、セントロメア領域のヘテロクロマチン化が動原体構築に必須である。分裂酵母では、セントロメアから転写される非翻訳性RNA(ノンコーディングRNA; ncRNA)がスプライシング因子Prp14なども介したRNA干渉システムによりセントロメアヘテロクロマチン形成を行う。本研究は、染色体構築及び分離におけるncRNAの機能を、分裂酵母とヒト培養細胞のそれぞれを用いて解析し、染色体動態におけるセントロメアncRNAの普遍的な役割と、それぞれの生物種特異的に進化したシステムの解明を目的としている。平成30年度では、分裂酵母のセントロメアヘテロクロマチン形成機構を解明するため、ヘテロクロマチン形成に異常を示すmRNA核外輸送変異株ptr8のサプレッサーをスクリーニングした。その結果、Sec5やHta1など複数の因子をサプレッサーとして同定し、一分子RNA FISH法を用いた細胞内動態解析結果と併せて、Ptr8のヘテロクロマチン形成機構への関与モデルを提唱した。 ヒト細胞を用いた解析では、間期セントロメアncRNP複合体の構成因子として分裂酵母Prp14のヒト相同因子であるDHX38を同定した。DHX38は間期でのみセントロメアncRNAと結合していることが示された。この因子のノックダウンにより異常な染色体分離が引き起こされることなどを明らかにし、間期での正常なセントロメアncRNP複合体形成がM期における染色体分離制御に重要であることが示された。更に、セントロメアncRNP複合体構成因子YB-1についても機能解析を進め、リン酸化YB-1が中心体への局在化を介して染色体分離制御に重要な役割を担っていること、間期においては、YB-1のリン酸化亢進が核の分葉化を引き起こすKey factorとしても機能することなどを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分裂酵母mRNA核外輸送因子Ptr8のセントロメアヘテロクロマチン形成機構における機能を解明するため、マルチコピーサプレッサーのスクリーニングを行い、Sec5、Hta1、Htb1など複数の因子の過剰発現によりptr8変異によるセントロメアヘテロクロマチン形成異常が抑圧されることを明らかにした。更に、Sec5とPtr8が転写因子Cbf11を介して相互作用する可能性を見いだし、Ptr8のセントロメアヘテロクロマチン形成機構への関与モデルを提唱できた。また、ptr8変異株におけるセントロメアncRNAの細胞内動態を一分子RNA FISHにより解析し、Ptr8がRNAiによるヘテロクロマチン形成に必要なncRNAをセントロメア領域へ係留する機能を担っている可能性を明らかにした。 ヒトセントロメアncRNP複合体構成因子YB-1について機能解析を進め、リン酸化YB-1が染色体分離制御に重要な役割を担っていること、間期においては、YB-1のリン酸化亢進が核の形態形成異常、即ち核の分葉化を引き起こすKey factorとして機能することなどを明らかにした。また、間期セントロメアncRNP複合体の構成因子として分裂酵母Prp14のヒト相同因子であるDHX38を同定した。DHX38は間期でのみセントロメアncRNAと結合しており、ノックダウンにより異常な染色体分離が引き起こされることなどを明らかにした。間期での正常なセントロメアncRNP複合体形成がM期における染色体分離制御に重要であることが示された。DHX38に関する論文は、Genes to Cells誌に投稿し現在revise中である。担癌マウスを用いた抗腫瘍効果の in vivo 検証を計画したが、ASOの合成費用が当初予算計画以上にかかることが判明し当面延期することとした。以上の研究成果から、おおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
分裂酵母のmRNA核外輸送変異ptr8のマルチコピーサプレッサーの機能解析を更に進める。免疫共沈解析などを用いてサプレッサー因子とPtr8との結合を検証する。また、セントロメアヘテロクロマチン形成に関わるRNAi因子群とPtr8との相互作用も同時に検証する。検証に必要なPtr8 遺伝子にFLAGタグ等を融合させた株は既に作成した。一分子RNA FISH によるセントロメアncRNAの細胞内動態解析を、ヘテロクロマチン形成に異常を示す様々な変異株も用いて更に検証する。また、Ptr8がRNAiによるヘテロクロマチン形成に必要なncRNAをセントロメア領域へ係留する機能を担っている可能性について、細胞生物学的手法及び遺伝学的手法を駆使して解析を進める。また、分裂酵母では、ペリセントロメア領域のみならず、キネトコアが形成されるセントロメアコア領域からもncRNAが転写合成されている。最近の解析によりスプライシング変異株prp14においてセントロメアコアncRNAが多量に蓄積し、染色体分離異常が生じることを発見したので、染色体分離制御におけるセントロメアコアncRNAの機能についても、サプレッサースクリーニングなどの遺伝学的手法を駆使して解明する。 ヒト細胞を用いたセントロメアncRNAに関する解析は、ncRNP複合体構成因子であるYB-1、 IMP-3、DHX38について更に機能解析を進め、ncRNAを介した染色体動態制御の詳細を解明する。また、YB-1については、リン酸化がその機能に重要であることが示されたので、腫瘍化にも関与することが報告されている102番目のセリン残基(Ser102)など、主要なリン酸化部位にアスパラギン酸やアラニンへの置換変異を導入し、リン酸化型及び非リン酸化型YB-1を発現させるプラスミドを構築してリン酸化とncRNA制御機能との関連を解析する予定である。
|
Research Products
(10 results)