2018 Fiscal Year Annual Research Report
枯死木が腐食連鎖系の群集組成と食物網構造に与える長期的影響の解明
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17H03732
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 智之 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (20633001)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金子 信博 福島大学, 農学系教育研究組織設置準備室, 教授 (30183271)
深澤 遊 東北大学, 農学研究科, 助教 (30594808)
中森 泰三 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 准教授 (50443081)
角田 智詞 信州大学, 学術研究院農学系, 助教(特定雇用) (30747936)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 枯死木 / 食物網 / 大規模風倒 / 伊勢湾台風 / 脂肪酸 / 安定同位体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、1959 年の伊勢湾台風による風倒地において、当時枯死倒木を搬出した場所(倒木除去区)としなかった場所(倒木残置区)の現在の腐食連鎖系の群集組成と食物網構造を比較することで、森林生物群集の有機物起源としての枯死木の寄与を定量的に明らかにするものである。 本研究の目的を達成するために、(1)野外採集とメタゲノム解析による群集組成の調査と(2)脂肪酸組成分析および安定同位体分析による物質移動経路を定量化し、食物網構造の解析を行っている。また、(3)消費者および捕食者の飼育実験により、餌資源の違いによる物質移動の変化を検証する。 2018年度は、2017年度に採集したサンプルの分析と、トラップ調査による生物群集の評価、メタゲノム解析による微生物群集の解析を行った。 これまでのデータに基づき、伊勢湾台風による風倒が、腐植食性の甲虫であるヒダチャイロコガネの植生および分布に影響していることを示した(Tsunoda et al. in press)。また、伊勢湾台風による撹乱が、現在の倒木上の菌類・コケ群集に影響し、それがさらに樹木実生の更新にも影響していることを示した(Fukasawa et al. 2019)。また、倒木を利用する変形菌とそれを捕食するトビムシ類の被食-捕食関係を明らかにした(片岡・中森2019、Kataoka & Nakamori 2019)。その他、風倒およびその後の倒木除去が森林炭素蓄積量に与える影響に関する論文を発表した(Suzuki et al. 2019, Morimoto et al. in press)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は概ね順調に進展している。2018年度中に終了すべき一部分析が2019年5月現在、進行中の部分があるが、2019年6月中には終了する予定である。また、2018年に実施予定であった飼育実験も、現在準備中で、これも2019年度前半には終了する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、(1)野外採集とメタゲノム解析による群集組成の調査と(2)脂肪酸組成分析および安定同位体分析による物質移動経路を定量化し、食物網構造の解析を行い、さらに(3)消費者および捕食者の飼育実験により、餌資源の違いによる物質移動の変化を検証する。 2017-2018年度において、風倒後の倒木残置区と除去区において、食物網の各階層の生物群を採集し、腐食連鎖系の群集組成を調べるための野外採集を行った。また、採集した生物について、食物連鎖を通じた物質移動のマーカーとなる脂肪酸および安定同位体を分析した。 採集したサンプルの仕分け・同定および分析を2018年度中に進めたが、まだ一部同定・分析が終わっていないため、2019年度は引き続き行う。同定・分析が終わり次第、枯死木量の違いが枯死木依存性の生物群の量・多様性に与える影響および枯死木量の違いによる食物網構造の変化を解析する。これらの結果を、国際学術誌に投稿する。 また、2017年度に行った飼育実験の試料を分析した結果、リターや腐朽度の異なる枯死木を餌資源として飼育したトビムシ類は、その餌資源によって脂肪酸組成が大きく異なっていることが示された。つまり、このトビムシを用いた系が、餌資源の違いが捕食者まで物質移動を検証するのに適した系であることが示された。2019年度は、異なる餌資源で飼育したトビムシ類で、捕食者(クモ類)を飼育し、倒木などの腐植性物質が食物網を介してどのように移行するかを明らかにする。
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