2019 Fiscal Year Annual Research Report
Analysis of flower type formation mechanism in chrysanthemum
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17H03762
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
柴田 道夫 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (80355718)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
樋口 洋平 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 講師 (00746844)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 園芸学 / 遺伝子 / 花型 / 頭状花序 / 八重咲き |
Outline of Annual Research Achievements |
キクタニギクから単離されたCYC2遺伝子のうち,発現レベルが高かった3種類について時空間的な発現解析を行った結果、発達初期の舌状花では花弁における発現が認められたのに対して、筒状花では雄蕊および雌蕊における発現が認められた.以上の結果から,CYC2遺伝子はキクタニギクの舌状花のみならず筒状花形成に関与することが示唆された.一方、キクタニギクにおけるゲノム編集による遺伝子破壊法の確立では,CYC2遺伝子などの花器官形成関連遺伝子をターゲットとしたCRIPR/Cas9システムによる実験を進めてきた.本年度,キクタニギクのCsCYC2cおよびCsCYC2eをターゲットとしたコンストラクトにおいて,CYC2遺伝子の数塩基欠失が確認された形質転換個体が複数得られた.ターゲット遺伝子配列の解析の結果、塩基欠失パターンは単純でなく、得られた形質転換個体はキメラと見なされた。得られた形質転換体を開花させ、野生型との表現型変異を解析したところ、野生型に比べて、舌状花、筒状花ともに花弁、雌蕊が短くなる変異が確認された.加えて、舌状花弁では花弁先端の切れ込みや雄蕊様の構造が生じるなど、舌状花が筒状花化する傾向が認められた。ゲノム編集による遺伝子破壊の結果からも、CYC2遺伝子は舌状花のみならず筒状花における小花形成に関与することが示唆された.また、BiFC法によるタンパク質間相互作用解析では,キクタニギクのBクラス遺伝子間での相互作用について確認したが,CYC2遺伝子との相互作用については見いだされなかった.さらに、栽培ギクにおいて多様な舌状花の形態変化が生まれる過程を明らかにする目的で、八重咲き品種における舌状花および筒状花の分化・発達について調べた結果,一旦舌状花がある段階まで発達したあとに筒状花の分化・発達が進み、その後、再び舌状花の発達が起こることが観察された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では,キクの頭状花形成機構を明らかにするため,キクタニギクにおいてゲノム編集による遺伝子破壊法を確立し,花器官形成関連遺伝子の高精度な機能解析に取り組む.さらに,キクタニギクおよび多様な形態を示す栽培ギク小花における網羅的な遺伝子発現解析から候補遺伝子を抽出し,頭状花序発達段階における詳細な時空間的発現解析を行うと同時に,タンパク質間相互作用解析から花期間形成を制御する新規転写複合体を明らかにすることとしている. ゲノム編集による遺伝子破壊法の確立に関しては,本年度キクタニギクのCYC2遺伝子であるCsCYC2cおよびCsCYC2eをターゲットとしたコンストラクトにおいて,CYC2遺伝子の数塩基欠失が確認された形質転換個体が複数得られ、形質転換体における表現型変異が確認できた.これはキク科植物における世界初のゲノム編集による遺伝子破壊の成果であるが、得られた遺伝子破壊株のターゲット遺伝子配列における塩基欠失パターンは単純でなく、かつ得られた形質転換個体は数種類の欠失パターンを含むキメラと考えられた.ゲノム編集による遺伝子破壊での遺伝子の高度な機能解析を行うためには更なる形質転換技術の改良が必要と考えられた.一方、CYC2遺伝子のゲノム編集による遺伝子破壊株の表現型解析および時空間的発現解析の結果,CYC2遺伝子はノボロギクやヒマワリでの報告のように舌状花形成だけに関与しているのではなく、舌状花のみならず筒状花の発達にも関わっていることが示唆された.また、当初期待していたCYC2遺伝子とCクラス遺伝子とのタンパク質間相互作用は確認できなかった.さらに,多様な花型を有する栽培ギクについては、舌状花には1mm未満の頭状花における発達段階と筒状花が分化し終わってからの発達段階の2段階があり、外反弁や管弁といった舌状花の形態変異は開花直前に生じている可能性が示唆された.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度キクタニギクでのゲノム編集により遺伝子破壊に成功したが,その効率は他の作物での報告に比べると低く、かつ遺伝子破壊のパターンが単純でなく、キメラ状となる問題があった.そこで,アグロバクテリウム系統をEHA105に変更,翻訳エンハンサーとHSPターミネーターをpDeCas9_Kanベクターに導入することでCas9タンパク質の転写・翻訳効率を改善できないか、また,これまでのAtU6プロモーターをキク内在性のCsU6プロモーターに変更することでgRNA転写効率を改善できないか検討する.また,カルス誘導培地における植物ホルモン濃度を変更して,培養期間の延長による形質転換効率の向上について検討する.さらに、本年度1ないし2種類のCYC2遺伝子の破壊により舌状花の筒状花化という表現型変異が得られたが、その表現型変異は舌状花においては不十分な筒状花化にとどまった.7種類CYC2遺伝子すべての機能欠損変異体の作出および特性調査を行い、CYC2遺伝子の舌状花形成の機能を明らかにする.加えて、BiFC法によりCYC遺伝子 とABCEクラス遺伝子との相互作用を明らかにし,新規複合体による頭状花形成モデルの解明を目指す.栽培ギクにおける多様な舌状花の形態形成の成因については、舌状小花形成後期以降の形態変化を詳細に調べるとともに,古典ギク品種などの小花形成後における網羅的な遺伝子発現解析を行い,キクにおけるさらなる八重化の候補因子を探索する.キクタニギクのゲノム編集による遺伝子破壊の研究成果については英文誌への論文投稿を行う
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Research Products
(1 results)