2017 Fiscal Year Annual Research Report
ハダニ類の大容量塩基配列解析によって得られた領域に基づいた超高速簡易識別法の確立
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17H03775
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
後藤 哲雄 茨城大学, 農学部, 教授 (60178449)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
粥川 琢巳 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, 主任研究員 (70580463)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ダニ・線虫管理 / 系統関係 / ゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
ハダニ類4属19種20系統(ナミハダニ属9種10系統、マルハダニ属4種、ツメハダニ属4種、マタハダニ属1種、アケハダニ属1種)について、実験計画の1. ハダニ類のRNA-Seqから得られた652遺伝子からの候補遺伝子の探索、および2. 候補遺伝子の種特異的配列に基づいた簡易識別用プライマー候補領域の選抜を行った。各種について100~200個体を供試して、HiSeq1000(Ilumina)によるRNA Seqを行い、種間における塩基配列の変異が大きい遺伝子を網羅的に探索した。RNA-Seqの結果、各種から平均17.9×106 readsが得られた。Trinity(k-mer=25)を用いてアセンブルを行ったところ、1種につき平均23,501本のコンティグが得られた。その後、ナミハダニゲノムデータを解析し、プライマー設計がしやすいと考えられるイントロンレスの遺伝子を探索した。その結果、上記の652遺伝子中34遺伝子がイントロンレスであることを確認できたので、これらを候補遺伝子とした。次に、変異が大きいUTR領域における種特異的プライマーの設計を試みた。いくつかの種では、UTR領域部分にプライマー候補が得られたものの、一部の種では十分な数の候補が得られなかった。そこで、全RNA-Seqデータから網羅的に種特異的プライマーを探索する解析を行った。得られたプライマー候補は、配列相同性、塩基組成、イントロンレスの遺伝子上にあるかどうかを考慮して絞り込んだ。以上の結果から、本研究の目的とする種特異的なプライマーを用いた簡易同定において肝要であるプライマー作成に適した新規の塩基配列を十分な数だけ得ることに成功した。またRNA-Seqの結果から、プライマー作成にあたり必要に応じて更なる塩基配列情報を追加することが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ハダニ類のうち代表的な害虫種に対してRNA-seqの手法を確立させていること、簡易識別のためのプライマー候補となりうる領域を多数得ることに成功していることから、当初予定通り順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に、RNA-seqにより得られた候補領域から、種特異的な増幅が可能なプライマーを設計する。プライマー設計には、追加で5種類のハダニ類についてRNA-seqを行い、加えて検討する。プライマー設計に際しては、より高速に増幅可能であるシャトルPCRにおける使用を念頭に、Tm値を高く設計する。設計したプライマーの種特異性については、特に同属他種のハダニでバンドが出現しないことを、多くのコントロール実験を用いて確認する。その上で、不適切なプライマーについては順次除き、最適な種特異的プライマーを得る。 第二に、複数のプライマーを用いたマルチプレックスPCR法の確立を行う。すなわち、先に設計した複数のプライマーを混合した条件のPCRにおいて、単体のプライマーを用いる場合と同様に種特異的なバンドが出現すること、および非特異的なバンドが出現しないことを目標とする。特に非特異的なバンドが出現しないための条件検討には、マルチプレックスPCR専用の酵素(例えばTaKaRaのMultiplex PCR Kit)などの利用を試みる。どうしてもバンドが生じてしまうプライマーの組み合わせについては、前述の方法でプライマーの再設計を行い、新たなプライマーを作り直す。
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