2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17H03778
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
川口 章 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 西日本農業研究センター生産環境研究領域, 研究員 (80520486)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
能年 義輝 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (70332278)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 根頭がんしゅ病 / 拮抗細菌 / 病害抵抗性遺伝子 / 病原性関連遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,ブドウ根頭がんしゅ病のバイオコントロール細菌である非病原性Rhizobium vitis ARK-1株とVAR03-1株の防除作用機構を明らかにするための試験を行った. まず,ARK-1株については,ARK-1株を処理することによる植物体の抵抗反応誘導を検証するため,ARK-1株処理後のブドウにおいて病害抵抗性誘導に重要な役割を持つサリチル酸,ジャスモン酸およびエチレン誘導に関与する遺伝子の発現量を定量PCR法によって測定した.その結果,対象とした5つの遺伝子(PR-1,PDF1.2,PR-4,LOX-9,ERF)の発現倍率は,接種1~12時間以内で全処理区において顕著な変動がなく,接種1~3日後においてもARK-1処理区の安定的な遺伝子発現量の増加は認められなかった.このことから,ARK-1株による根頭がんしゅ病防除の作用機構において,ブドウの病害抵抗性誘導の積極的な関与の可能性は低いと考えられた. 次に,VAR03-1株については,アセトシリンゴンによるTi株の病原性関連遺伝子の発現誘導は抑え,その抑制活性が拮抗株の培養上清に存在することを明らかにした.VAR03-1株の培養上清は病原細菌株の増殖抑制活性も示し,これら両活性は熱処理に感受性で分子量10万以上の画分に検出された.そこで,トランスポゾンをもちいた拮抗株のランダム変異導入法により両活性を司る遺伝子の同定を試みた.拮抗株のコロニーにTi株を軟寒天培地で重層した時に形成されるハローを指標とし,病原細菌株への抗菌性を喪失した2つの変異株を得た.プラスミドレスキュー法で得たトランスポゾン隣接ゲノム断片と全ゲノムショットガン法で得たコンティグの塩基配列の解析から,2株のトランスポゾンは同一遺伝子の異なる位置に挿入していることを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
VAR03-1株を使った研究は順調に進んでいる.しかし一方で,ARK-1株については民間企業と地方自治体(岡山県)が特許を持っている菌株であることから,岡山県に対してARK-1株の分譲を申し込んだところ,知的財産関係の対応が遅く,分譲に至る契約を民間企業,岡山県,農研機構の3社で締結するのに,予想外の時間がかかり,予定より半年以上も遅れてしまった.そのため,ARK-1株を用いた試験研究が予定よりやや遅れている.
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Strategy for Future Research Activity |
ARK-1株の菌株分譲が想定外に遅くなったため,トランスポゾンベクターを用いたARK-1の変異株の作成が本年度から開始することになった. それ以外の研究に関しては,当所の予定通りに実施することとしている. 1)ARK-1株による根頭がんしゅ病菌の病原性関連遺伝子発現抑制の範囲の特定 ARK-1株と根頭がんしゅ病菌のブドウへの混合接種時におけるvirAからvirGまでの主要な病原性関連遺伝子とIV型分泌系関連遺伝子群の発現量をRT-qPCRで検証する。 2)VAR03-1株の抗菌性喪失変異株の性質の検証 変異株の拮抗性低下の確認,トランスポゾンにより破壊された遺伝子とその周辺の遺伝子の解析,さらに破壊された遺伝子の復元による拮抗性の復活について調べる.
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Research Products
(4 results)