2019 Fiscal Year Annual Research Report
ペプチダーゼ最大ClanPA唯一のエキソペプチダーゼファミリーの構造機能相関解明
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17H03790
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
小笠原 渉 長岡技術科学大学, 工学研究科, 教授 (40292172)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | S46ペプチダーゼ / 基質認識機構 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、申請者が先導研究してきた非病原菌Pseudoxanthomonas mexicana WO24由来S46ペプチダーゼをモデル酵素とし、病原菌由来S46ペプチダーゼの網羅的な基質特異性解析およびサブサイトとα-ヘリカルドメインを中心とした構造機能相関の解明を行う。最終的には、Family S46構造機能相関の完全解明を目的としている。さらに本研究は、ヒトが有しないS46ペプチダーゼをターゲットとした、歯周病原因菌、多剤耐性日和見感染菌を抑制可能な創薬開発への基礎研究となる。本年度は以下の「課題(1)S46群の構造解明」「課題(3)S46基質認識機構の解明」を行った。 課題(1)S46群の構造解明 今年度は新たに多剤耐性菌日和見感染由来SmDPP11の結晶化に成功した。加えて、歯周病原因菌由来PgDPP7の結晶化にも成功した。これらの酵素に関してはSe-Met置換体を発現・精製・結晶化し、位相の決定を試みる。さらに、基質ポケットにクエン酸イオンを結合したPgDDDPP11の高分解能な構造解析に成功した。今後は、結晶化に成功していない標的タンパク質の純度向上を目指す。 課題(3)S46基質認識機構の解明 P1位の酸性アミノ酸の結合を模倣するクエン酸イオンが結合したPgDPP11の構造解析から基質認識残基を同定した。加えて、SmDPP7とジペプチドとの結合様式を等温滴定型カロリメトリー(ITC)を用いて熱力学的に解析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題(1)S46群の構造解明 今年度は新たに、院内感染の起因菌で肺炎や菌血症での死亡率が5~7割に達する多剤耐性日和見感染菌Stenotrophomonas maltophilia に由来するSmDPP11の結晶化に成功し、回折データ取得に成功した。Se-Met置換体の結晶構造解析を進めている。さらに、日本成人の7割が有病している歯周病の主な原因菌であるPorphyromonas gingivalisに由来するPgDPP7の結晶化に成功し、回折データ取得に成功した。こちらも現在、Se-Met置換体の結晶構造解析を進めている。これまでにPgDPP11の基質との共結晶構造解析に至っていなかったが、今回クエン酸イオンが結合したPgDPP11を高分解能(1.50 Å)で決定した。クエン酸イオンが基質P1位の酸性アミノ酸の結合を模倣していることが証明された。 課題(3)S46 基質認識機構の解明 基質ポケットにクエン酸イオンが結合したPgDPP11の高分解能な構造解析に成功した。クエン酸イオンは基質P1位の酸性アミノ酸の結合を模倣しており、PgDPP11の基質認識機構を改めて証明した。さらに、この構造を用いて3Dファーマコフォアを作成しin silico、in vitroスクリーニングを経て、非ペプチド系阻害化合物を見出した。 以前の研究からS46ペプチダーゼにおいてS2サブサイトにおける基質認識には水素結合ネットワークが寄与していることが示唆されている。今回、種々のジペプチドとSmDPP7の結合をITCを用いて解析することで、S2サブサイトにおける水素結合ネットワークの寄与を示した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)S46群の構造解明 結晶化に成功していないS46群、SpDPP11、PeDPP7、PeDPP11の精製純度の向上および結晶構造の取得を目指し、S46群の構造解析を行う。 (2)・(4)S46群の網羅的基質特異性およびイミド結合切断能の解明 羅的基質特異性およびイミド結合切断能の解明のため、本研究では、長鎖ホルモンを含む様々なオリゴペプチドを基質とした解析を実施予定である。HPLCによる分解ジペプチドの検出の基盤構築を目指す。 (3)S46基質認識機構の解明 Subfamily S46Sに属するS46ペプチダーゼの構造が得られていないため、SmDPP11の構造決定を優先して実施する。これによりSubfamily S46Sの基質認識機構を解析し、その他のSubfamily S46 G、Rと比較する。また、Subfamily S46Sの基質認識残基の基質特異性への寄与を解析するため、DAP BIIをモデル酵素とした変異解析によって基質認識に関与している残基の同定を目指す。加えて、網羅的に基質認識残基を解析することで、基質認識構成残基と基質特異性の相関関係を明らかにする。 (5)S46α-ヘリカルドメインの機能解明 分子動力学シミュレーションを用いて、基質ペプチドとS46ペプチダーゼのαヘリカルドメインの相互作用を解析する。P. mexicana由来のS46ペプチダーゼの構造のうち、長さの異なる基質ペプチドとの複合体構造3種類を用いて、50 nsの分子動力学シミュレーションを実施する。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] The Crystal Structure of Peptidase Toward Drug Discovery2019
Author(s)
Sakamoto, Yasumitsu, Saori Roppongi, Yoshiyuki Suzuki, Tsukasa Ishihara, Koushi Hidaka, Akihiro Nakamura, Nobuyuki Honma, Wataru Ogasawara, and Hiroaki Tanaka
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Journal Title
International Journal of Microgravity Science and Application
Volume: 36
Pages: 360106
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Presentation] 抗菌薬開発に資するPorphyromonas gingivalis 由来Dipeptidylpeptidase11の構造解析と阻害化合物探索2020
Author(s)
中村 彰宏, 阪本 泰光, 鈴木 義之, 渡邉 友里江, 關谷 瑞樹, 六本木 沙織, 櫛引 千里, 飯塚 一平,谷 修, 阪下 日登志, 伊中 浩治, 田仲 広明, 山田 貢, 大田 和敬, 本間 宣行, 志田 洋介, 中西 真弓, 野中 孝昌, 合田 浩明, 田中 信忠, 小笠原 渉
Organizer
日本農芸化学会 2020年度 福岡大会
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[Presentation] Fragment-based discovery of inhibitory compounds of bacterial proteases for the development of the novel antibiotics.2019
Author(s)
Akihiro Nakamura, Yasumitsu Sakamoto, Yoshiyuki Suzuki, Saori Roppongi, Yosuke Shida, Koji Inaka, Hiroaki Tanaka, Kiyoito Kihira, Mitsugu Yamada, Izumi Yoshizaki, Hiroaki Gouda, Takamasa Nonaka, Nobutada Tanaka, Wataru Ogasawara
Organizer
Tsukuba Conference 2019
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[Presentation] Fragment-based discovery of the first nonpeptidyl inhibitor of an S46 family peptidase2019
Author(s)
Akihiro Nakamura, Yasumitsu Sakamoto, Yoshiyuki Suzuki, Saori Roppongi, Yosuke Shida, Koji Inaka, Hiroaki Tanaka, Kiyoito Kihira, Mitsugu Yamada, Izumi Yoshizaki, Hiroaki Gouda, Takamasa Nonaka, Nobutada Tanaka, Wataru Ogasawara
Organizer
4th STI-Gigaku
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