2019 Fiscal Year Annual Research Report
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17H03794
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
吉田 昭介 奈良先端科学技術大学院大学, 研究推進機構, 特任准教授 (80610766)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | PETase |
Outline of Annual Research Achievements |
Polyethylene terephthalate (PET)を唯一の炭素源として増殖可能な細菌Ideonella sakaiensisが効率的にPETを分解、代謝する仕組みについて研究を進めた。本年度は昨年度に引き続き、(1)I. sakaiensis由来PET加水分解酵素PETaseの機能解析および機能改良、(2)遺伝子破壊系の最適化、(3)PET分解に関与する遺伝子の探索についておもに研究を進めた。(1)では本酵素と、そのホモログである耐熱性クチナーゼの結晶構造比較を試みた。活性部位、予測された基質結合部位周辺に認められたPETaseにおいてユニークなアミノ酸残基に着目し、これらアミノ酸残基への変異導入を相互に行って酵素活性を調べた。その結果、耐熱性クチナーゼの酵素活性が大きく変化することが分かった。一方、これらの変異は耐熱性酵素の構造安定性にも影響するものの、わずかな低下にとどまった。(2)では、昨年度に開発した遺伝子破壊系の詳細な条件検討を複数の遺伝子をターゲットとして破壊を行い、検証した。(3)では本菌を種々の条件で培養し、プロテオミクス解析、トランスクリプトーム解析を行った。それぞれの条件における遺伝子発現や、タンパク質局在の比較を行ったところ、良好なPET分解を示すときに発現が上昇する遺伝子群や、PETフィルム上において有意に濃縮されるタンパクなど、新たに、PET分解に関与することが期待される多くの因子を見出した。これらのうち、複数の遺伝子について、本研究課題で開発した遺伝子破壊系を用いた遺伝子破壊株の作製に成功した。現在、これら破壊株の増殖試験を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)PET加水分解酵素の変異体の機能解析から、PETaseに特徴的なアミノ酸残基がPET分解活性に及ぼす影響について重要な知見を得ることができた。 (2)本研究課題で開発した遺伝子破壊系の有効性を実証することができた。 (3)PET分解に関与する遺伝子の候補の絞り込みが前進し、今後解析すべきターゲット遺伝子を決定することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
得られたPETase、および耐熱性クチナーゼ変異体の活性と熱安定性について詳細な生化学的解析を行い、論文にまとめ投稿する予定である。また、PET分解に関与する候補遺伝子の遺伝子破壊、遺伝子破壊株の解析を通じて、遺伝子機能の解明を進める。
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