2018 Fiscal Year Annual Research Report
強力な抗感染症作用を持つ特異構造天然物の全合成と構造活性相関・化学生物学への展開
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17H03810
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
桑原 重文 東北大学, 農学研究科, 教授 (30170145)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | amycolamicin / nonthmicin B / actinoallolide A / 抗菌薬 / 抗原虫薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
広範な薬剤耐性菌に対する強力な抗菌作用を有する放線菌二次代謝産物amycolamicinの全合成について,大きな進展を見た。amycolamicinを構成する5つの構成ユニット(A-E)のうち,最大の課題であった新規単糖(amycolose)を含むDEユニットの調製を完了した。DEユニットの調製では,2,3-ジアルコキシケトン中間体に対するアルコキシビニルリチウム試薬の付加が高ジアステレオ選択的に進行することを見出し,対応する3級アルコールを単一の立体異性体として得ることに成功した。また,DEユニットの2種のメチルグリコシド型アノマー(amycolamicinの分解産物であり,細胞毒性を持つ)の合成にも成功した。Cユニットの調製に関しても,Heck反応と不斉還元を経る簡潔なDiels-Alder反応前駆体の合成ルートを確立し,Cユニット調製完了も間近な状況であるため,次年度の早い時期にamycolamicinの世界初の全合成を達成できるものと考えている。極めて強力な抗トリパノソーマ活性を持つ放線菌二次代謝産物actinoallolide Aについては,最大の難関であったマクロラクトン化をケテン中間体を経ることによって実現したが,最終段階である鈴木-宮浦クロスカップリング反応による側鎖の連結がうまく進行していない。引き続き反応条件を探索するとともに,現在は,他の連結法についても検討している。抗菌作用とともに様々な有用生理作用を持つ放線菌二次代謝産物nonthmicin Bについては,鍵反応となるTHP/THF環構築法の開発に取り組んでいるところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
nonthmicin Bの全合成に関してはワンポットTHP/THF環構築法の開拓に進展が見られていないが,amycolamicinの全合成研究は大きく進展し,actinoallolide Aについても全合成の完成間近となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
amycolamicinについては,DEユニット(amycolose部位)の調製を完了するとともに,Cユニット(デカリン部位)の調製も完成間近であるため,残す課題は,新規糖amykitanoseとテトラミン酸からなるABユニットの調製とA-Eユニットの連結による全合成の完成である。ABユニットの調製については,グルコースからの誘導とともに,不斉反応を利用した短工程合成法についても検討する。テトラミン酸部位の調製については定評のある合成法を使う予定であり,問題は少ないと考えている。actinoallolide Aについては,残す課題はマクロラクトン部位と側鎖部位の連結のみである。鈴木-宮浦クロスカップリングとともに,他の連結法についても網羅的検討を行い,全合成を完成させたい。nonthmicinについては,鍵反応となるTHP/THF環構築法の確立に全力を注ぎ,研究を進展させたい。
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