2017 Fiscal Year Annual Research Report
細胞壁ナノ周期物性差は細胞壁形成の日周性がつくるのか
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17H03843
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
吉田 正人 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (30242845)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 細胞壁 / 微細構造 / 材形成 / 走査型プローブ顕微鏡 / 形状解析レーザー顕微鏡 / イオン液体SEM法 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞壁に存在するナノ周期物性差の全容を明らかにするため以下の研究結果を得た。 イオン液体を細胞壁に染み込ませることで、含水した細胞壁を高分解で観察する手法を探った。温度や圧力変化が生じても揮発が起こらなく、かつ導電性を有するイオン液体は、電子顕微鏡の鏡筒内における高真空状態でも細胞壁の乾燥による変形を防いでくれた。また、導電性があるために試料表面に金属コーティングを行う必要がなく、従来の手法に比べてより真の姿に違い観察が可能であった。従来法では細胞壁間が乾燥によって剥離する場合でも、イオン液体SEM法ではそれが起きることはなかった。イオン液体を染み込ませた試料を蒸留水で洗うことによって、イオン液体を除去することができ、他の観察・解析機において、同一試料を用いるコリレーション解析を可能にできた。 育成室で、明期が長い条件と暗期が長い条件のそれぞれで、針葉樹苗木を生育し、次年度で解析する明暗条件が細胞壁形成におよぼす影響、つまり、ナノ周期物性差がどのように明暗条件に影響をうけているかを調べるための試料作成をおこなった。 走査型プローブ顕微鏡で細胞壁の高低差像と位相差像を得るための条件を見直し、観察表面にダメージを与えないが、nm単位での超高分解での観察が両立するこれまでよりも良い条件を見出した。 形状解析レーザー顕微鏡で細胞壁を観察すると、反射レーザー強度が強い部分と弱い部分が同心円の縞状構造があることが判明した。この縞状構造は、走査型プローブ顕微鏡で得られる物性差と関わりがある可能性があった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
形状解析レーザー顕微鏡が細胞壁の縞状構造を示すことを新たに見出した。これは当初期待していないことであった。当初は、走査型プローブ顕微鏡による位相像とのコリレーション解析に用いる像を得る予定であったため、これは新たな発見であった。 他の研究結果については、当初計画通りに進行している。乾燥試料と含水試料の観察像の違いをイオン液体SEM法から得た。イオン液体を試料から除去することで、SEM以外の顕微鏡像とのコリレーション解析が可能となった。明暗周期を制御して生育した苗木試料が作成できた。
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Strategy for Future Research Activity |
生育環境の明暗周期が細胞壁の超微細構造にどのような影響を与えるのか、ナノ周期物性差の周期性およびその周期を生み出すセルロースミクロフィブリル束とマトリクス領域の配置について調査を行う。明暗周期を人為的に制御した苗木試料をもちいて、走査型プローブ顕微鏡でこれらを解析する。 また、形状解析レーザー顕微鏡で得られる細胞壁の縞状構造が何に起因しているかを調査する。
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