2019 Fiscal Year Annual Research Report
Electrolytic mediator system for lignin degradation
Project/Area Number |
17H03844
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高野 俊幸 京都大学, 農学研究科, 教授 (50335303)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上高原 浩 京都大学, 農学研究科, 教授 (10293911)
榊原 圭太 京都大学, 化学研究所, 助教 (20618649)
飛松 裕基 京都大学, 生存圏研究所, 准教授 (20734221)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | リグニン / 電解酸化 / メディエーター / リグニン分解物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度、昨年度に引き続き、リグニン電解酸化におけるメディエーターの探索を中心に検討した。まづ、天然系メディエーター(リグニンの生分解で生成する低分子フェノール化合物)の検討では、S核由来メディエーターに引き続き、G核由来メディエーターの人工リグニン(DHP)の電解酸化について検討し、G核メディエーターがS核メディエーターとほぼ同様な反応挙動(末端のコニフェリルアルデヒド構造の酸化、レジノール構造(β-β構造)の顕著な減少など)を示すことを確認した。また、これらの天然系メディエーターは、これまでに良好な性能を示した合成系メディエーターであるNHPIより、酸化能力が高いことも判明した。次いで、電解酸化の詳細を検討するため、S核メディエーターによる非フェノール性リグニン二量体の電解酸化も行った。その結果、β-O-4型とβ-5型リグニン二量体では末端酸化が確認されたものの、β-β型リグニン二量体では酸化反応が全く進行しなかった。そのため、DHPの電解酸化におけるレジノール構造の顕著な減少について、さらなる検討を要することがわかった。また一方、合成系メディエーターであるプロマジン、リノール酸を用いて、主に、リグニン二量体の電解酸化を行った。その結果、基質の構造の相違により、反応の選択性が大きく異なることが判明した。たとえば、リノール酸のフェノール性リグニン二量体の酸化では、β-O-4型リグニン二量体の酸化反応のみが進行し、β-5型、β-β型リグニン二量体の酸化反応はほとんど進行しなかった。また、電解酸化の水溶性基質として、リグニン-糖複合体(LCC)モデル化合物の合成も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で述べたように、さらなるメディエーターの探索の結果、これまで良好であった合成系メディエーターであるNHPIより酸化能力の高い天然系メディエーターを見出すことができた。また、リグニンの電解反応の反応選択性が、メディエーターや基質の化学構造に大きく左右されることが改めて確認することができた。そのため、本研究課題は”おおむね順調に進展している”と判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までに、メディエーターのスクリーニングがある程度できたように思われる。そのため、研究計画にしたがって、次年度(研究の最終年度)では、電解酸化の重要な反応因子の一つである電解質の検討、およびリグニン-糖複合体(LCC)の電解酸化や実際の天然リグニン(MWL)の電解酸化を実施する予定である。また、これまでの研究成果を論文としてまとめる作業にも注力したいと考えている。
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