2017 Fiscal Year Annual Research Report
Dust explosion of woody biomasses
Project/Area Number |
17H03849
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
重松 幹二 福岡大学, 工学部, 教授 (00242743)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | バイオマス / 粉じん爆発 / 安全工学 / 燃焼 / 再生可能エネルギー / 抽出成分 / 粘着性 / 着火性 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、製材屑を成形したペレット燃料、バイオエタノール原料としての微粉化処理、プラスチック複合材製造での混練工程など、木質バイオマスの新たな利用法や製造工程が導入されようとしており、製造過程、原料の輸送や貯蔵時において、粉じん爆発の危険性を認識することは重要である。 本年度は、様々なバイオマスの粉じん爆発危険性をJIS 8818による爆発下限濃度および最小着火エネルギーの測定値で判定した。独立変数として特に樹種の違いを取り上げ、含有する抽出成分が揮発性であれば着火性を促進し、粘着性であれば粉体凝集性を増して粉じん爆発を抑制すると考えて、この相反する作用を抽出成分の量と質に注目して明らかにすることを目指した。その結果、針葉樹では概ね粘着性が支配的に作用しているが、広葉樹では樹種によって様々で着火性が優勢的に作用するものも多かった。 さらに、木質ペレットの品質向上のため開発が進んでいるトレファクション(半炭化)処理を取り上げ、熱処理が進むにつれて最小着火濃度は低下し危険側に移行するものの、炭化が進むことで最小着火エネルギーは上昇して安全側に移行することがわかった。また、食用スパイスであるオレガノも木質材料と同様に芳香成分である揮発成分や含有水分が粉じん爆発危険性に大きく作用した。さらに、疎水性官能基を持つセルロース誘導体は未修飾セルロースと比べて極端に危険性が高く、低い吸湿性に伴う低い粉体凝集性が作用しているものと推察した。 これらの結果を踏まえ、揮発成分や水分の影響に焦点を当て、木質バイオマスのみならず、バイオマス全体の粉じん爆発危険性を統一的に説明できる研究へと展開する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
<粉じん爆発危険性に対する抽出成分の作用> 多様な樹種からの木粉の粉じん爆発危険性を評価したところ、抽出成分を取り除くことで危険性が上昇する樹種もあれば、低下する樹種もあった。前者は抽出成分の粘着性が優勢である樹種で、後者は揮発性抽出成分の着火性が優勢な樹種であると推定される。粉じん爆発危険性に対する抽出成分の作用は針葉樹と広葉樹で大別されるようで、針葉樹では概ね粘着性が支配的に作用しているが、広葉樹では樹種によって様々で着火性が作用するものも多かった。現在のところ粉じん爆発危険性に対する要因について統一的に説明できる段階には至っていない。 <木質ペレットのトレファクション処理の影響> 木質ペレットの発熱量とハンドリングを向上させるためトレファクション処理が開発されている。熱処理時間が異なる試料の危険性を評価したところ、処理が進むにつれて最小着火濃度は低下し危険側に移行するものの、炭化が進むことで最小着火エネルギーは上昇して安全側に移行することがわかった。 <食用スパイスやセルロース誘導体の粉じん爆発危険性> 当初の計画にはなかったが、2016年米国オレガノ工場で粉じん爆発事故が発生したことに注目して試験的に危険性評価を行ったところ、木質材料と同様に芳香成分である揮発成分や含有水分が大きく作用することがわかった。また、疎水性官能基を持つセルロース誘導体は、未修飾セルロースと比べて極端に危険性が高いことがわかった。この要因は、低い吸湿性に伴う低い粉体凝集性であると推察している。
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Strategy for Future Research Activity |
<粉じん爆発危険性に対する抽出成分の作用> 多様な樹種における粉じん爆発危険性の違いの第一要因を抽出成分の作用としてとらえ、抽出成分の物理的特性を明らかにしていく。具体的には、抽出成分自身の粘性発現温度やピーリングテストから粘着性を評価するとともに、蒸気圧、熱分解温度、引火点や発火点から着火性を評価する。 <細胞組織構造による影響> 針葉樹の粉じん爆発危険性はおおむね抽出成分の作用で説明できそうであるが、広葉樹はその挙動が複雑であり抽出成分の特性のみでは説明できそうもない。そこで、抽出成分を取り除いた粉体の熱分析や発熱量測定から化学組成の影響を、また、粉体の顕微鏡観察により細胞組織構造による影響を調査する。 <木質ペレットのトレファクション処理の影響> 熱処理時間が異なる試料の粉じん爆発危険性の変化は概ねわかったが、その要因は明らかではない。そこで、上述の抽出成分の作用と同様に、溶媒抽出による化学分析から危険性が変化する要因を調査する。また、発熱量や吸湿性を考慮した危険性評価を行い、安全指針の提案につながるデータを得ていく。 <食用スパイスやセルロース誘導体の粉じん爆発危険性> 食用スパイスやセルロース誘導体も木粉と同様の挙動を示していると考え、揮発成分や水分の影響に焦点を当てることで、木質バイオマスのみならず、バイオマス全体の粉じん爆発危険性を統一的に説明できる研究へと展開する。
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Research Products
(4 results)