2018 Fiscal Year Annual Research Report
白化した有藻性イシサンゴの回復過程で生じる褐虫藻獲得に関する細胞応答機構の解明
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17H03852
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
久保田 賢 高知大学, 教育研究部総合科学系黒潮圏科学部門, 教授 (00314980)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
富永 明 高知大学, その他部局等(名誉教授), 名誉教授 (50172193)
関田 諭子 高知大学, 教育研究部総合科学系黒潮圏科学部門, 准教授 (70314979)
Ulanova Dana 高知大学, 教育研究部総合科学系複合領域科学部門, 助教 (70610129)
櫻井 哲也 高知大学, 教育研究部総合科学系複合領域科学部門, 准教授 (90415167)
目崎 拓真 公益財団法人黒潮生物研究所, 研究部局, 研究所長 (20840482)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 有藻性サンゴ / 白化 / 回復 / 細胞応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度に生じた問題で延長されていたトランスクリプトーム解析については,Acropora hyacinthusおよびPocillopora damicornisを用いて,馴化飼育前後,白化後および回復後の枝からTrizol Reagent (Sigma Aldrich)により抽出した総RNA試料を用いて実施した。BioAnalyzer 2100(Agilent Technologies)を用いたRNAのクオリティチェック後,cDNA調製,ランダムフラグメント化およびそれに続く5 'および3'アダプターライゲーションによってライブラリー構築を行なった。ライゲーション反応によりアダプター付加後,フラグメントをPCR増幅し,配列分析を行なった。 トランスクリプトーム解析のために調製した総RNA試料のクオリティチェック後に解析を実施した。100bpに満たない解析結果を除いた解析対象の塩基対は,それぞれ98.5%~99.1%および98.2%~99.0%であった。両種ともコンティグ数は25万以上を示したが,1,000 bpでのフィルタリングで6万~7万へと減少した。Pocillopora damicornisについては公開済みのトランスクリプトームデータを参照配列としてコンティグを構築したが, Acropora hyacinthusについては,利用可能なゲノムおよびトランスクリプトームの公開データが見当たらなかったことから,同属のAcropora milleporaのトランスクリプトームデータを参照した。また,褐虫藻についてはSymbiodinium microadriaticumのものを用いた。両種それぞれの有藻性イシサンゴの参照配列に対して相同性を示したコンティグは9万以上を示したものの,褐虫藻のそれに対しては約1,100~1,700と少ない種類に留まった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Acropora hyacinthusおよびAcropora hyacinthusそれぞれのコンティグ長の最大値は39,289および35,334,中央値は2,785および3,000となった。そのため,当初の目的である白化および回復時に生じる細胞応答反応を詳細に検討する上で不可欠な,構造遺伝子をコードするmRNA配列が十分に分析できていることが示唆された。さらに,トランスクリプトーム分析に先立ち,キャピラリー電気泳動法により実施したクオリティチェックにより,100bp前後のサイズのピークが全ての資料で認められたことから,コンティグ長が短い配列についても,別の観点で分析することにより,白化や回復過程で生じる特徴的な細胞応答現象が発見される可能性も考えられたことなどから,本研究は概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
複数回の水槽実験の実施による条件検討により,3ヶ月程度の長期にわたる水槽実験の条件が定まった。また,本研究以外に有藻性サンゴの白化や回復を模した長期水槽実験の例が少ないことから,その過程における発現mRNAの状態について示した先行研究例が少なかった。本研究により,一見白化の進行により目視では状態が良くない試料を用いた場合でも,トランスクリプトーム解析が可能であることが示された。 今回のトランスクリプトーム分析で得られた発現RNAのライブラリを基礎データとして,様々な種や白化・回復の条件を与えた有藻性サンゴ試料の個別の発現RNA変動解析を進める予定にしている。
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