2017 Fiscal Year Annual Research Report
Study on the marine ecological role of labyrinthyulids
Project/Area Number |
17H03855
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
本多 大輔 甲南大学, 理工学部, 教授 (30322572)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊地 淳 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, チームリーダー (00321753)
長井 敏 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 中央水産研究所, グループ長 (80371962)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 海洋生態系 / 原生生物 / 物質循環 / 微生物ループ / 食物連鎖 / ヤブレツボカビ類 / DHA / ラビリンチュラ類 |
Outline of Annual Research Achievements |
【現存量を多様性の把握】大阪湾での1ヶ月ごとの定点モニタリングと北部太平洋域のサンプリングを実施した。環境DNA抽出および精製法について,処理する海水の量,フィルターサイズ,抽出法(フェノール・クロロホルム,CTAB,Isoplant kit,Power Soil kit)の比較,DNA抽出物中の夾雑物の影響を考慮した補正法の適用などについて詳細に検討し,それぞれの最適化に成功した。さらに優占することが予想されている3系統群のうち,Aplanochytrium系統群について,特異的に増殖するようにPCRプライマーおよび,Taq Man プローブの設計を終了した。 【一次生産者や捕食者の解明】Aplanochytrium属株が栄養源としている対象は,これまでに珪藻Skeletonema属株が知られていた。複数の珪藻類の培養株との二員培養試験を実施した結果,いくつかの珪藻についても,Aplanochytrium属株が栄養源としている可能性が示唆される結果を得た。また,実際に環境中における関係を理解するため,ラビリンチュラ類を特異的に染色するCARD-FISH法のプロトコールの検討を進めた。Aplanochytrium属株についてFISHの蛍光が観察されるに至ったが,甲殻類に対する非特異的な染色などもあり,プロトコールの最適化を進めている。 【生物間エネルギー流量の測定】安定同位体を用いた物質転送量の測定を行うための予備実験を行った。珪藻Skeletonema属株の13Cによるラベリングを試みたが,珪藻の増殖が十分量を得られず,より良い培養条件の検討を進めている。またAplanochytrium属株の単独培養で増殖させて,甲殻類のアルテミアに摂取させることで,物質転送量を測定することを目指しているが,Aplanochytrium属株の増殖量が十分ではないなど,これらの培養法についても検討の余地がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
【現存量を多様性の把握】環境サンプルの処理方法から,最も注目しているAplanochytrium系統群についての分析方法の最適化が進んでいる。この過程で得られた知見と経験から,他の系統群についての検討も開始しており,おおむね順調に進んでいる。 【一次生産者や捕食者の解明】ラビリンチュラ類を特異的に染色するCARD-FISH法のプロトコールの最適化が進み,培養株を用いたものでは,十分な蛍光を観察することができている。一方で,予想外の甲殻類に対する非特異的な蛍光が観察されたことから,内在性ペルオキシダーゼの不活性化などについて,検討を進めている。 【生物間エネルギー流量の測定】珪藻Skeletonema属株を安定同位体(13C)を含むNa2CO3によってラベリングすることを試みたが,珪藻の増殖が十分量を得られず,残念ながら測定実験をすることができていない。
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Strategy for Future Research Activity |
【現存量を多様性の把握】および【一次生産者や捕食者の解明】については,進めるべき方向性に変更はなく,2017年度に蓄積した知見と経験から,研究内容を加速して進めていく。 【生物間エネルギー流量の測定】については,珪藻の種や株を変更して安定同位体によるラベリングを成功させるように検討を進める。また,ラビリンチュラ類が特異的に豊富に生成蓄積するDHAに着目して,DHA量を測定することで物質転送量を推定することも検討する。Aplanochytrium属株の単独培養での増殖が十分でないため,単独培養が容易なラビリンチュラ類の株を用いることも検討する。
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