2017 Fiscal Year Annual Research Report
養殖クロマグロに寄生する住血吸虫の感染予防に向けての基礎研究
Project/Area Number |
17H03865
|
Research Institution | Meguro Parasitological Museum |
Principal Investigator |
小川 和夫 公益財団法人目黒寄生虫館, その他部局等, 館長 (20092174)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
脇 司 公益財団法人目黒寄生虫館, その他部局等, 研究員 (50775963)
白樫 正 近畿大学, 水産研究所, 准教授 (70565936)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 住血吸虫 / クロマグロ / 中間宿主 / 生活環 |
Outline of Annual Research Achievements |
養殖場での野外調査・試験:クロマグロ住血吸虫(Cardicola orientalis)の中間宿主であるフタエラフサゴカイの生態を把握し、感染ゴカイ出現の季節性を調べるため、2017年6月から原則毎月1回、クロマグロ養殖場の生け簀ロープに生息するフサゴカイ類を調べた。その結果、感染ゴカイは夏季に多く出現する、という季節性が見られた。しかし、2015年には最大18.8%であった寄生率は6.6%と大幅に低下したのみならず、11月~翌4月には感染ゴカイが1個体も確認されず、中間宿主における寄生が著しく減少した事が明らかとなった。その理由として、生け簀構造物の清掃によるゴカイ類の駆除により、住血吸虫の生活環が一旦途切れたとも考えられ、新たな防除法として有望である可能性が示された。一方、フサゴカイ類の生息数は冬季に増加しており、付着生物が多く発生する低水温期にゴカイも成長することが示唆された。野外試験ではフサゴカイの生殖時期を把握するため、ケイ酸カルシウム板(付着板)を水深0-4mに垂下し、ゴカイ幼生の着定状況を調べた。付着板は毎月回収、ホルマリン固定しており、後日環形動物の専門家のアドバイスを仰ぎフサゴカイの幼生を識別する予定である。これらの調査から、これまで不明であった中間宿主ゴカイの生殖・生態に関する基礎的知見が集積される見通しである。 室内実験:試験用ゴカイを維持するため、水槽での飼育方法を検討した結果、流水飼育と粉末魚類用飼料により、健全な状態で半年以上の飼育が可能となった。飼育ゴカイは自然下と同様に営巣し、目立った衰弱や死亡は見られなかったが、繁殖は確認されていない。本年度は感染ゴカイの確保が困難であったため、住血吸虫のセルカリア幼虫を使用した感染実験等が実施できなかった。そこで、幼虫の安定供給を目的にゴカイを使った移植in vivo培養を試みたところ一定の増殖を確認した。今後は条件を検討し、成功率を高める予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度はマグロ養殖場で住血吸虫に自然感染したゴカイの割合が著しく少なく、試験に使用できる程の感染ゴカイを確保できなかった。そのため、当初予定していた住血吸虫の幼虫を使用した感染実験等が実施できなかった。また、養殖マグロでの住血吸虫感染も少なかったため、ふ化幼虫の実験に必要な虫卵も確保できなかった。これは研究の最終目的であるマグロ養殖場での寄生予防がある程度成功したため、とも考えられるが、実験計画の見直しが必要となった。
|
Strategy for Future Research Activity |
自然感染ゴカイに頼った実験系は今後も実施が困難になることが予想されるため、in vivo培養系を確立し、住血吸虫の幼虫を安定的に供給するシステムを構築する必要がある。既に、ゴカイの飼育や培養の予備試験は実施しているため、今後は培養条件や培養に使用するゴカイ種についても検討し、成功率の向上を図る。また、必要であれば、住血吸虫の被害が顕著な別海域のマグロ養殖場での感染ゴカイ採取も実施する。本年の結果から、生け簀構造物のゴカイ駆除が住血吸虫感染予防に有効である可能性が示されたため、ゴカイおよび養殖マグロでの寄生状況を調べ、ゴカイ駆除前と比較し、その効果を確認して研究の最終目標である予防法の確立に繋げる。
|