2018 Fiscal Year Annual Research Report
加熱変性リゾチームを用いた水系感染症ウイルスの新規不活化法の開発
Project/Area Number |
17H03872
|
Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
高橋 肇 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (40413116)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 加熱変性リゾチーム / ノロウイルス / 不活化 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究において、加熱変性したリゾチームに抗ノロウイルス効果があることを発見した。リゾチームは細菌の細胞壁に作用する溶菌酵素であるが、加熱変性することによりペプタイドとして作用するようになると推測されている。本年度までの実験では、ヒトノロウイルスへの効果、A型肝炎ウイルスへの効果を確認し、食品中の中に存在するこれらウイルスの不活化が可能であることが明らかにした。しかしながら、加熱変性リゾチームによるウイルス不活化機構については判然としていない。そこで本年度の研究では、加熱変性リゾチームによるノロウイルス不活化機構を詳細に解析した。 はじめに、リゾチーム溶液のpHとウイルス不活化効果との関係を検証した。pHを4.5から8.5に調整した卵白リゾチーム溶液を用い、MNV-1に対する不活化効果を確認したところ。不活化効果は溶液pHの上昇に伴って増大し、加熱変性リゾチームの表面疎水度は、溶液のpHが高くなるにつれて上昇することが明らかになった。 続いて、リゾチーム配列におけるウイルス不活化領域を探索するために、断片化試薬を用いてリゾチームを断片化し、その加熱変性体をMNV-1に曝露した。その結果、V8プロテアーゼあるいはリシルエンドペプチダーゼで断片化することで、不活化効果が著しく減少することが明らかとなった。 また、先の研究でMNV-1に対して不活化効果を示すことが確認されているリゾチームの前半部分の配列に任意の変異を加え、加熱変性した際のMNV-1不活化効果を検証した。その結果、電荷または疎水性に関わるアミノ酸を置換するとMNV-1に対する不活化効果が失われた。 以上より、加熱変性リゾチームによるウイルス不活化効果には、加熱によるリゾチームの立体構造のほぐれに伴う表面疎水性の上昇と表面電荷が関与していることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り進捗しており、加熱変性リゾチームのメカニズムとして加熱によるリゾチームの立体構造のほぐれに伴う表面疎水性の上昇と表面電荷が関与していることまでが明らかとなっており、今後の研究上非常に重要な情報が得られていると考えられる。また、複数の食品を用いた系において、加熱変性リゾチームによるウイルスの不活化に成功しており、高い応用性があることも示せため
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終目標は、加熱変性リゾチームのノロウイルス不活化機構を明らかとし、不活化能を有するドメインを特定、その部分を合成することにある。2019年度においは、当初計画通り、不活化能を有するドメインを決定し、大腸菌への組み換え、発現を試みる。これに成功したのちは該当ドメインを効率よく生産することが可能になると考えられ、今後この不活化能を有するドメインを含む製剤を作成する際に大幅にコストを下げることが可能になるものと思われる。また、発現させた不活化能を有するドメインがこれまでの加熱変性リゾチームと変わらないウイルス不活化能を有し、安定的に使えるよう検討を行う予定である。
|
Research Products
(2 results)