2017 Fiscal Year Annual Research Report
生産・加工空間におけるストレス操作によるカンキツ成分制御法の確立
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17H03891
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
北村 豊 筑波大学, 生命環境系, 教授 (20246672)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
喜多 正幸 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, その他部局等, その他 (10343972)
粉川 美踏 筑波大学, 生命環境系, 助教 (10732539)
星 典宏 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 西日本農業研究センター, 上級研究員 (70414787)
國賀 武 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 西日本農業研究センター, 上級研究員 (80355411)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ストレス / 糖酸成分組成 / クマリン / 粒度分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は栽培空間におけるストレス操作の解析として、水環境のストレス制御による応答生成物の評価を行った。温州ミカン(宮川早生)を対象に慣行栽培による収穫果実と、夏季から収穫期まで水分を透湿性プラスチックシートなどで物理的に遮断し、水分ストレス状態で栽培した収穫果実を本年度の試供果実とした。試供果実は収穫時期などの違いから、慣行の12月上旬の収穫時期の果実、以下"通常収穫"と、意図的に1月下旬まで収穫を遅延させ、樹上で完熟させた果実、以下"樹上過熟"とし、さらに収穫果実を1月下旬まで常温貯蔵した果実、以下"過剰保存"として大別した。これらの果実を加工前の生試料として糖成分組成、酸成分組成、クマリン組成などの評価を行った。 また加工空間におけるストレス操作の解析として、MWM におけるストレス操作が栄養成分に与える影響を明らかにするため、MWM を用いた試供果実のスラリー化 を行い、その粉砕力、粉砕温度、粉砕時間の評価を行った。具体的には家庭用のミキサーを用いて、ヘタ部分を取り除いた外果皮と果肉を3分間粗粉砕した。粉砕後、レーザ回折式粒度分布測定装置によりメディアン径を計測した。続いて先行研究より、原料供給流量及び石臼回転数が被粉砕物の粒径に影響を与えることが報告されているMWMについて、それら操作条件である原料供給流量を10、20、30、40 mL/min、石臼回転速度を20、29、39、50rpmにそれぞれ調整を行い、粉砕・スラリー化特性を明らかにした。 さらに試供果実のスラリー化したものを加工試料とし、同様に糖成分組成、酸成分組成、クマリン組成を評価し、生試料との比較評価、検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
温州ミカン(宮川早生)を対象に慣行栽培による収穫果実と水分ストレス状態で栽培した収穫果実を収穫時期などの違いから大別し、試供果実とした。これらについて加工前の生試料として成分組成を解析した。糖成分組成、酸成分組成は、果実をハンドプレスにより搾汁したのち、遠心分離によりパルプ部分を除去し、上澄みを0.45μmのフィルターでろ過し試料とした。調製した試料をHPLCにより、糖組成(グルコース・フルクトース・スクロース)、有機酸組成(クエン酸・リンゴ酸・α-ケトグルタル酸)について分析した。検出は糖については示差屈折率検出器、酸については電気伝導度検出器により実施した。クマリン組成については、試供果実の果皮および果汁を用いて行った。1g重を試料とし、國賀ら(2005)の方法を用い、脂溶成分を抽出して薄層クロマトグラフィーに展開した。その後紫外線を照射して蛍光を発するクマリンを検出し生成量が予想とより多い処理加工についてHPLCによるスコパロンの定量も試みた。 また供試ミカンのMWM粉砕では、原料供給流量が20 mL/minまでは、石臼回転速度を上昇させると粒径も増加した。30 mL/min以上では石臼回転速度が上昇するほど粒径は小さくなった。原料供給速度が10、20 mL/minの時ではメディアン径が最も小さかったが、供給速度が低いため、石臼が空引き状態になることがあった。30と40 mL/minを比較すると30 mL/minの方が小さい粒径を得ることができた。また40 mL/minの場合、MWMの中心軸部分から原料漏れが確認された。試供果実のスラリーについても、同様に糖成分組成、酸成分組成、クマリン組成を評価し、生試料との比較検討を行った。 現在、測定データを解析しており、研究は概ね順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
栽培空間におけるストレス操作、加工空間におけるストレス操作を介した果実について成分組成の解析などを行い、得られた知見を新たなストレス操作に展開するなどし、本研究を推進させる予定である。 本年度行った栽培空間におけるストレス操作は、カンキツ樹体への水分供給を人為的に制限することにより水分ストレス状態とする水環境のストレス操作である。このストレス操作によって成分組成に差違が生じるとの仮説に基づいて行った。従来の水分を透湿性プラスチックシートなどで物理的に遮断してストレスを操作する方法から発展して、栽培空間において地下部を冷却し、根からの水分吸収量を抑制するなど、新たなカンキツ樹体への水分供給を制限することを検討する。 栽培空間において、水、温度、光などの必須要素をストレスとして操作するものであり、引き続き操作の検証と得られた果実の品質および組成成分の変動の確認を行う。 加工空間におけるストレス操作ではスラリーの栄養成分(ビタミンC、βクリプトキサンチン)を測定し、物理ストレス(せん断)の影響を明らかにする。またスラリー噴霧乾燥後の粉末の物理化学的評価を行い、物理ストレス(熱)の影響を評価する。
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Research Products
(1 results)