2018 Fiscal Year Annual Research Report
植物利用型有用タンパク質生産における環境制御とその効果の機構解明に関する研究
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17H03893
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松田 怜 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (20547228)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
富士原 和宏 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (30211535)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 環境制御 / バイオ医薬品 / 二酸化炭素施用 / 遺伝子発現 / 小胞体ストレス / ベンサミアナタバコ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,ワクチンなどの有用タンパク質の遺伝子を植物に後天的に導入して一過的に発現させる一過性遺伝子発現法を対象として,遺伝子導入前後の植物の栽培環境が有用タンパク質生産量に及ぼす影響を明らかにするとともに,環境制御の効果をもたらす生理的メカニズムを解明することを目的としている。本年度は,おもに(1)遺伝子導入前後のCO2濃度が有用タンパク質生産量に及ぼす影響の解明,および(2)遺伝子導入後の気温が有用タンパク質生産量に及ぼす影響のメカニズムの解析,に取り組んだ。供試植物にベンサミアナタバコを,有用タンパク質にインフルエンザワクチンであるヘマグルチニン(HA)を用いた。(1)では,予想に反して,遺伝子導入前のCO2施用による植物のバイオマスおよびバイオマスあたりのHA含量への影響が顕著でないことを明らかにした。その一因は,ベンサミアナタバコの光合成およびバイオマス生産能力が低く,人工光型植物工場における一般的な栽培条件でおおむね上限に近い生長速度となっていることにあると示唆された。また,CO2濃度以外の,遺伝子導入前の光合成有効光量子束密度(PPFD)および気温は,収穫時(遺伝子導入後6日目)のバイオマスあたり有用タンパク質含量および株あたり有用タンパク質集積量に影響を及ぼすことも明らかとなった。(2)では,遺伝子導入後の気温が25℃の場合,20℃と比較して,HA遺伝子および小胞体ストレスマーカー遺伝子の転写産物量が大となる傾向にあった。25℃では,HA遺伝子の転写レベルが植物にとって過剰となることで小胞体ストレスが生じ,その結果ネクロシスが生じて,HAタンパク質含量がむしろ早期に減少するものと推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画調書,および本年度の交付申請書に記載した研究実施計画に,おおむねしたがって進展したため。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,(1)遺伝子導入前の栽培環境が有用タンパク質生産量に及ぼす影響の解明,および(2)遺伝子導入後の気温が有用タンパク質生産量に及ぼす影響のメカニズムの解析,を中心に進める。(1)では,PPFDおよび気温をおおよそ一定に制御可能な人工光型植物工場と,それらの環境要素レベルが日・季節変化する温室とで,それぞれ遺伝子導入前栽培を行なった場合のHA生産量への影響を調べる。人工光型植物工場を想定したグロースチャンバと温室とでそれぞれ栽培実験を行い,栽培バッチごとの有用タンパク質生産量のばらつきを評価することで,実用生産における遺伝子導入前栽培に適したシステムについて考察する。(2)については,昨年度の研究により示唆された,HA遺伝子転写産物量と小胞体ストレスとの関係をより詳細に解析するため,各種遺伝子の転写産物量の経日変化を明らかにする実験を反復する。また,異なるベクターを用いた場合の応答についても検討を進める。
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Research Products
(6 results)