2018 Fiscal Year Annual Research Report
Multiple Approach based on nano and micro structure observations to evaluation of the cell integrity and quality of fruit and vegetables
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17H03899
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田中 史彦 九州大学, 農学研究院, 教授 (30284912)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 農業工学 / X線CT / シミュレーション工学 / バイオスペックル |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、収穫直後のカキ、ミカンなどを対象に、以下の3中課題、すなわち(1)青果物細胞組織のナノ・マイクロ構造の観察と解析、(2)マルチフィジックス・シミュレーションによる細胞組織の諸物性値の推算、(3)バイオスペックル法による細胞アクティビティの計測と活性度マッピングについて研究を遂行した。(1)では、μX線CT装置(Skyscan 1172、Bruker)により生のカキ果肉細胞組織をマイクロレベルで観察し、3.24μm幅でスライスした画像から細胞と空隙の境界を抽出、これをAmira6.0ソフトを用いて三次元再構成し、バーチャルな果肉組織モデルを構築した。空隙率の異なる果肉組織を0~0.7程度まで準備し、これとCT値の関係を実験式により整理し、これを介してノーマル解像度のCT画像データとの紐づけを行った。(2)では、(1)で構築したモデル領域内における輸送現象を解析し、異方性の有無、対流の有無を評価、熱の流れに対し異方性があることと、対流の有無により、空隙率―熱伝導率の関係を表す最適なモデル式が異なることを明らかにした。また、CT値から水分分布を可視化する方法も見出した。(3)では、例えば、選果場から入手直後と貯蔵7日目のミカンについて、バイオスペックルの平均輝度値を比較したところ、貯蔵7日目でその値が低下すること、また、平均輝度値は品温の上昇によってほぼ増加することが明らかにした。また、初日の輝度値の揺らぎが大きいことが観察された。この傾向はカキについても同様に確認され、バイオスペックルによる鮮度評価の可能性を示した。(4)については、カキの0℃および25℃における貯蔵期間中、水分が低下することが実験ならびに(2)の可視化法から明らかにし、(3)のバイオスペックルによる観察結果と関係性があることも示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
いずれの中課題も、本年度設定した目標を達成した。(1)および(2)では、微細構造観察技術と画像解析技術の融合による青果物果肉細胞組織のバーチャル化とこのモデルを対象とした熱移動逆解析により熱伝導率の推定を可能とするなど、厳密な数理モデルに基づく熱物性値の推算法を確立した。また、細胞スケールで得たCT値と先の逆解析から推定した物性値、青果物個体レベルでX線CT観察したスライス画像のCT値を相互に関連付けることで、非破壊的に熱伝導率分布の可視化する技術を開発するなど、世界で初めてとなる手法を確立した。さらに、細胞の活性度を直接計測できる可能性の高いバイオスペックル法により、新鮮さを定量的に評価できる可能性を示した点は高く評価される。よって、本年度は当初の計画通りに研究が進捗したものと結論した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、前年度までの研究を継続し、バイオスペックル計測ならびに高解像度X線CT等による細胞情報の取得と解析から細胞組織の健全性診断、ひいては青果物の品質評価につながる総合的研究を遂行したい。 (1)では、青果物細胞組織について、高解像度X線CT装置等によるマイクロレベルでの微細構造観察と原子間力顕微鏡(AFM)によるペクチン構造観察等ナノレベルでの解析を行い、細胞構造の特徴を数式化・定量化するなど、より微細な構造解析に着目したい。(2)では、(1)で得た青果物の3次元形状ジオメトリーを用いて、細胞組織や細胞壁マトリックススケールでの物質移動シミュレーション等を行い、貯蔵中に変化する熱物性を推定、これらの分布を可視化したい。(3)では、バイオスペックル観測により取得した動画を画像解析するとともに時系列解析を深化させ、揺らぎの特徴量を抽出、この結果と細胞の活性度(原形質流動等の細胞内部での生理活動を示す指標)の関係を明らかにしたい。最後に、(4)青果物細胞の健全性、品質評価では、(1)~(3)で得た成果を、青果物の品質評価に生かすためのフレームワークを設計・構築したい。
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Research Products
(9 results)