2017 Fiscal Year Annual Research Report
家畜繁殖障害の原因究明を目指した分泌小胞エクソソームによる卵巣制御機構の解明
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17H03900
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
杉浦 幸二 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (20595623)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
城口 克之 国立研究開発法人理化学研究所, 生命システム研究センター, ユニットリーダー (00454059)
藤井 渉 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (40708161)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | エクソソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
動物の繁殖障害は家畜生産性の低下に直結する重大な問題である。その主な原因として、卵巣卵胞の発育異常や排卵障害が知られるが、これらの疾患に至るメカニズムの多くは未解明である。申請者は、この卵胞発育異常や排卵異常の原因が、卵巣でのエクソソーム制御異常である可能性を見出した。本申請は、エクソソームによる卵巣制御を証明し、さらに、エクソソーム制御異常に起因する卵巣異常の同定を目的とし、本年度は下記の3項目について解析を行った。 ①初代細胞培養を用いたエクソソームの機能評価:ブタをモデルとして、ブタ卵胞液のエクソソームを単離し、ブタ壁顆粒層細胞、卵丘細胞、卵母細胞の培養系への添加の影響を解析した。その結果、エクソソームがこれらの細胞での遺伝子発現に影響を与えること、さらに、卵母細胞の成熟を促進する可能性などが明らかとなった。 ②マウス卵巣器官培養用いたエクソソームの機能評価:マウス卵巣の器官培養系において、エクソソーム分泌に必要なN-SMase活性を試薬によって阻害し、卵胞の発達動態、さらにそれを構成する細胞の分化・機能に与える影響を解析した。その結果、N-SMase阻害により卵胞発達が抑制されること、さらに、ステロイド生産に関連する酵素の遺伝子発現が異常になることなどを明らかとした。 ③エクソソーム分泌に必要なN-SMase遺伝子の同定:当初、初代培養細胞にRNA干渉法を用いて遺伝子を同定する予定であったが、N-SMase遺伝子欠損マウスの作製が一部先に完了したことから、欠損マウスの表現型より、表記遺伝子の同定を試みた。その結果、特定のN-SMase遺伝子欠損マウスにおいて、卵巣異常が観察されたことから、その遺伝子がエクソソーム分泌に重要であると考えられる。この点については、次年度以降さらに研究を行っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
項目③において、当初計画していたRNA干渉法によるスクリーニングを行わなかったが、当初予定より早く遺伝子改変マウスの作製が完了し、実際に卵巣表現型が見られることまで確認できたため、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初予定より早く遺伝子改変マウスの作製が終了したため、今後はこのマウスモデルの表現型解析を中心に研究を推進する。卵巣卵胞の発育動態、性周期、排卵数、血中ホルモン濃度などの解析、さらに野生型マウスとの交配実験により総合的な繁殖能力を評価する予定である。 また、マウスモデルで観察された卵巣異常が哺乳類一般にエクソソーム異常により観察されるのかどうかについて、ブタ器官培養系を用いて解析する。ブタ器官培養系の確立と評価については、29年度中から開始しているので、今後は十分な培養系が確立され次第、実験に取りかかる予定である。
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Research Products
(4 results)