2018 Fiscal Year Annual Research Report
家畜繁殖障害の原因究明を目指した分泌小胞エクソソームによる卵巣制御機構の解明
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17H03900
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
杉浦 幸二 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (20595623)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
城口 克之 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, ユニットリーダー (00454059)
藤井 渉 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (40708161)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | エクソソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
動物の繁殖障害は家畜生産性の低下に直結する重大な問題である。その主な原因として、卵巣卵胞の発育異常や排卵障害が知られるが、これらの疾患に至るメカニズムの多くは未解明である。申請者は、この卵胞発育異常や排卵異常の原因が、卵巣でのエクソソーム制御異常である可能性を見出した。本申請は、エクソソームによる卵巣制御を証明し、さらに、エクソソーム制御異常に起因する卵巣異常の同定を目的とし、本年度は下記の3項目について解析を行った。 ①N-SMase遺伝子欠損マウスの表現型解析:N-SMase活性は卵巣体細胞におけるエクソソーム分泌に必須である。N-SMase遺伝子にはSmpd2、3、4の3遺伝子が存在するが、昨年度までにSmpd2とSmpd4遺伝子については遺伝子欠損マウスを作製済みである。本年度は、これらの遺伝子欠損マウスについて詳細な表現型解析を行った。その結果、Smpd4遺伝子についてはノックアウトマウスが胎生致死となり、卵巣表現型の解析には至らなかった。一方、Smpd2遺伝子については、卵胞の体細胞の発達状態に異常が見られた。しかし、メスが不妊などの顕著な異常は見られなかった。 ②卵巣器官培養におけるエクソソームの機能評価:マウス卵巣の器官培養系においてN-SMase阻害剤の影響を解析した。卵巣の体細胞での遺伝子発現に影響が見られたが培養系が安定せず有意な差を検出するには至っていない。 ③エクソソームの作用メカニズムの解析:卵巣の発達には卵母細胞の分泌する増殖因子(卵因子)が重要な役割を果たす。エクソソームが卵巣体細胞へ影響を及ぼすメカニズムを理解する目的で、卵巣体細胞におけるエクソソーム分泌・取り込みに対する卵因子の影響を解析した。その結果、卵因子はエクソソームの分泌に影響を及ぼさない一方で、取り込みを制御することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
遺伝子改変マウス、卵巣器官培養ともに顕著な異常は見られないものの、解析自体は順調に進展している。ブタの器官培養については、培養系に立ち上げに予想以上に時間がかかり、残念ながら本年度中の解析開始には至らなかった。一方で、当初予定にはなかったがエクソソームが卵巣の発達を制御するメカニズムの一端として、卵因子によるエクソソーム取り込み制御の可能性を見出すことができた。以上より、おおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き遺伝子改変マウス、器官培養系を用いたエクソソーム機能の解析を行う。また、観察された異常がエクソソームに起因することを器官培養系におけるレスキュー実験により確認する。さらに、卵因子によるエクソソーム取り込み制御についても、エクソソームの作用メカニズムに関する興味深い知見であることから、詳細な解析をマウス、ブタ両方をモデルに行う予定である。
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Research Products
(4 results)