2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17H03902
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
笹浪 知宏 静岡大学, 農学部, 教授 (80322139)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 受精 / 輸卵管 / 精子 / 精子貯蔵管 / ウズラ |
Outline of Annual Research Achievements |
有性生殖は、生物の遺伝的多様性を維持するために必要であり、生物は進化の過程で、有性生殖を成功させるための多様な生殖戦略を獲得してきた。雌雄同体の 無脊椎動物では自家受精を避ける仕組みが存在し、その分子メカニズムが明らかになりつつある。しかし、いかなる高等生物においても、遺伝的多様性を維持す るメカニズムは明らかになっておらず、生物界の大きな謎として残されている。本研究では、鳥類の輸卵管における精子貯蔵、精子-卵子相互作用に着目し、遺伝 的多様性を維持するメカニズムの解明を目的とした。 平成30年度は、雄の受精能力と精子の遊泳との関係をウズラを用いて調査した。その結果、受精能力の高い精子は鞭毛が長いことが判明した。長い鞭毛を持つ精子は粘性の高い溶液中での遊泳速度が速いことも判明した。実際に鞭毛の長い精子と短い精子を生産する雄の精子を混合して人工授精したところ、産仔の父性は鞭毛の長い精子を産生する雄に偏ることがわかった。加えて、精子貯蔵管への精子の侵入に対する精子鞭毛長の影響を調査した。その結果、予想通り、鞭毛の長い精子は精子貯蔵管に侵入しやすいことが判明した。 上述の成果に加え、精漿成分の解析を行った。その結果、ウズラの精漿には、抗酸化作用を有する2種類のタンパク質が存在することが判明した。また、受精能力に高い雄の精漿にはこれらの抗酸化タンパクの量が多いことも判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
雄の受精能力と精子鞭毛長との関連を明らかにし、これが当初の目的の一つである精子と精子貯蔵管との相互作用に深く関連していることを明らかにすることができた。加えて、精漿中に抗酸化作用を有するタンパク質を2種類同定し、受精能力との関連性を明らかにすることができた。以上のことから、本研究は順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度までに明らかになったことを基盤とし、次年度は、精子鞭毛長を制御する遺伝子群の同定、精漿中の抗酸化タンパクの同定、さらには、現時点では未着手である、卵子内での精子の挙動観察方法の確立を目指して研究を推進する予定である。
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