2018 Fiscal Year Annual Research Report
ホルモンと糖鎖から迫る骨格筋組織の質的・量的制御のメカニズム
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17H03934
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
保坂 善真 鳥取大学, 農学部, 教授 (00337023)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
割田 克彦 鳥取大学, 農学部, 准教授 (40452669)
樋口 雅司 鳥取大学, 農学部, 講師 (70614791)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | エストロゲン / エストロゲン受容体 / コンドロイチン硫酸 / 筋分化 / 脂肪分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
以下の研究を行った。1)筋損傷後のマウスの筋修復・再生過程での組織の変化およびコンドロイチン硫酸合成にかかわる酵素(コンドロイチン硫酸基転移酵素;chst)群の遺伝子発現の検索。2)筋芽細胞(C2C12)および脂肪前駆細胞(3T3-L1)のエストロゲン処理後のchst群の発現動態の解明。 1)前脛骨筋に筋損傷を誘導したのち、系時的にエストロゲン(E2)受容体(Esr1, Esr2)およびchst群(chst12,chst15,chst3およびust)の発現を検索すると、Esr1の発現は損傷筋では、観察期間を通して対照筋と比較して有意に高い値を示し、3日目に発現量のピークに達した。Esr2の発現量も、期間を通して対照筋と比較して有意に高く、そのピークは7日目であった。chst群の発現は、種類によって発現ピークに違いはあるが、総じて筋損傷誘導後3日目および7日目で高値を示した。細胞レベルの検索では、分化誘導中にE2処理すると、筋芽細胞の分化マーカーは増加しE2が筋分化に影響を及ぼしていることが示唆された。 2)C2C12でのEsr1およびEst2の発現量は低いものの、筋分化誘導でこれらの発現量は増加した。chst3の発現は、分化の進行によって低下したが、E2による影響は認められなかった。他のchst群もE2による影響はほとんど認められず、in vitroレベルにおいて、E2単独ではC2C12のchst群の発現に影響を及ぼさないと推測した。3T3-L1でも分化が進行すると、chst群の発現が抑制されたが、この抑制はE2の有無にかかわらず惹起された。したがって、E2はC2C12同様、3T3-L1のchst群の発現に影響を及ぼさないと推測した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画に基づきおおむね順調に実験を進めた。また、実験に用いるための遺伝子改変動物(エストロゲン受容体ノックアウトマウス)数を十分に確保し、実験を安定して行うことができるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞レベルでは、E2によるchst発現の影響は見られなかったが、生体レベルでその変化が確認できたことより、ノックアウト動物を用いてCS産生に関与する細胞とエストロゲン受容体の同定、そしてエストロゲンとCSが筋再生に及ぼす影響と作用機構の解明に取り組む。具体的にはエストロゲン受容体ノックアウトマウスをE2刺激し、CSやCS合成酵素の発現・産生量の詳細なデータを取得し、筋細胞の増殖・分化の各ステージに深く関与するCS種を推定する。また、低E2状態の病態モデルマウス(OVXマウス)を作成し、筋組織に惹起される現象を解析する。さらに、マウスのE2濃度を調節することで、筋組織の質的・量的回復を試みるとともに、OVXマウスの低E2状態での筋組織の特徴を解析する。さらに、薬剤で筋損傷を誘導し、低E2状態での筋組織再生の特徴を解明したのち、E2を投与しながら筋損傷を誘導し、筋組織の修復がE2存在下で短縮するかも検討する。E2による筋組織の質的・量的回復を試み、E2による、筋組織の回復能を総合的に評価する。
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Research Products
(1 results)