2017 Fiscal Year Annual Research Report
Can symbiotic bacteria emerging in the Nansei islands establish mutualistic associations with any stinkbugs
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17H03946
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
細川 貴弘 九州大学, 理学研究院, 助教 (80722206)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 潜在的共生細菌 / 環境細菌 / 共生器官への定着 |
Outline of Annual Research Achievements |
南西諸島の環境中にはカメムシ類の必須共生細菌と同等の生物機能を持った自由生活細菌が生息している(以下では細菌C~Fと記す)。この細菌がカメムシの体内に侵入し、本来の共生細菌と置き換わり、新しい共生細菌としてカメムシの野外集団中に維持されていることが、2科10種にもわたるカメムシで最近発見された。はたしてこの細菌はどんなカメムシとも共生可能なのだろうか?本研究課題では、この細菌がどのようなカメムシと共生でき、どのようなカメムシと共生できないのかを明らかにすること、および共生できないカメムシについてその原因を解明することを目的として、細菌C~Fのさまざまなカメムシへの実験的感染、比較ゲノム解析、遺伝子機能解析などを行う。多くのカメムシは重要な農業害虫であることから、細菌C~Fのような新興共生細菌が今後どのようなカメムシと共生する可能があるのかは応用昆虫学の分野において重要な知見となるであろう。また、細菌C~Fが共生できないカメムシについてその原因を明らかにすれば、カメムシと本来の共生細菌の間の特異的相互作用の実体解明にもつながり、共生の進化生物学においても意義深い発見となることは間違いない。 重要な農業害虫であるミナミアオカメムシの無菌1齢幼虫に対して細菌C~Fを接種したところ、確率は低いものの、正常に成長する個体が見られた。これらの個体の共生器官内の細菌を分子生物学的に同定したところ、大半の個体では接種した細菌であることが確認された。しかし一部の個体では接種したものではない細菌が共生しており、これらは飼育時の餌等に混入(コンタミネーション)していた細菌である可能性が高い。これらの結果から、(1)細菌C~Fは共生器官への定着率が低いもののミナミアオカメムシと共生できる、(2)細菌C~F以外にも潜在的な共生細菌が環境中に存在している、と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ミナミアオカメムシにおける飼育実験はおおむね順調に進んだと言える。しかし飼育実験において細菌C~F以外の細菌の混入(コンタミネーション)という想定外の事態が起きたため、他の種のカメムシについては飼育の餌および滅菌方法を検討する必要が生じ、進捗がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
ミナミアオカメムシを重点的材料に設定して、当初の計画通り以下の実験を進める。 1、細菌C~Fを接種したときに正常に成長する場合:C~Fは次世代に垂直伝播されるか?について調べる。 2、細菌C~Fを接種したときに正常に成長しない場合:C~Fは共生器官に到達できているか?、C~Fは共生器官内で増殖できているか?について調べる。 また、平成29年度の実験で発見した潜在的共生細菌は、ミナミアオカメムシの成長をサポートできるにもかかわらず野外ではカメムシと共生していないという興味深い環境細菌である。これらの細菌をカメムシに実験的に接種して上記1、2と同様の調査をおこない、細菌C~Fの結果と比較することで共生に関与する形質を探索する。
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Research Products
(4 results)